第四百二十九話 見ている側からすれば
「きゃ〜!、何ですのあれは?!」
カンパン夫人が悲鳴をあげて見入っている。
ベルタン夫人も怯えながらも視線を動かせなかった。
「あ、あれは……こんな事あっていいのか? 女王と王妃のやる事か!」
モプーも色を失いながら声を絞り出した。
マリーの何たるかを知っているビロンも驚きを隠せない。
(王妃様はとにかく女王様がここまでやるとは……しかしこれは…………)
「おい、止められないのか?」
ブザンヴァルが問いかけた。
即答でビロンは答えた。
「無理です。誰にも止められません、それとも極刑になりたいですか?」
「あれ本気で言ってるのか?」
「確かめにでも行く気ですか? お勧めできません」
「うう……」
同じく地面に引かれた線上で見ていたモルパが呟いた。
「これはもう、あんなのに取り入れるのか?……何という母娘じゃ!」
「クワを武器に……止めなくて良いのですか?」
カークは国王に問いかけた。
しかし国王は答えない。
どう答えればいいのか分からなかったのだ。
ここでバジーが口を開いた。
「マリー様が負ける訳がないはずだがな……」
「バジー、何が言いたい?」
「マリー様は今まで何度も戦ってきたが一人も死者を出していない。これが実の母となれば怪我さえさせる訳にゃいかないだろう。相手は本気でマリー様をぶっ潰しそうな勢いだ。暴走した相手を無傷で止める事ができるか? もしかしたらこれはマリー様にとっても至難の業じゃねえのか?」
「そ、そんな! それじゃもしかしたらマリー様が負けるかもって……」
ビスケが声を震わせる。
「負けたらどうなるんですか……?」
青ざめるビスケ。
負ければ無傷では済まないかも……護衛の立場からすればあってはならない事だ。
「君達何を話してるんだ?」
「えっえっ?」
黙っていた国王が割って入ってきたので三人は泡を食った。
「一人も死者を出してないとは何だね?」
バジーが慌てて取り繕うとした。
「それは、それは、言った通りマリー様が死者を出す様な行いをするなどあり得ないって意味です!」
「ん? ……そうか?」
まだ納得できてなさそうだ。
「あ、マリー様が!」
バジーが指差して叫んだ。
「何?!」
王が振り返る。
(ふう、ごまかせたか?……あっ!)
見ると睨み合っていた母娘が動き出したのだ。
傍観者だけど気楽に見てはいられない。
護衛なら尚更。
王様はもう少し空気を読んでください。
そして母娘がぶつかる? …………クワ持って。




