第四百二十二話 馬車を追う手は足
ビロンとの会話を終えたマリーは早速小トリアノン跡へと向かった。
国王はマリーとは一足遅れて同所へ向かった。
そしてテレジアの馬車が準備された。
豪華な馬車が馬小屋から出る事は重鎮達にテレジアの居所を知らせる事を意味した。
「なに、馬車が広間に?」
「はいっ」
部下の報告を聞いたモルパは色めきたった。
「どこに行くのだ?」
「そこまでは……聞ける状況ではありませんでした」
「むむう、女王、お出かけか! 先程の失敗を何とか取り戻さねば」
「大丈夫ですか? さっきあんなに凄まれたのに」
傍にいるユルリックが心配そうに問いかけた。
「それでも行かねばならぬ。行かねば他の者に出し抜かれる。わしの他にも女王に取り入ろうとする者はいくらでもいるだろう」
「それでも呼ばれてないのでしょう?」
「呼ばれてなくともこちらが行っていけないと言う事はないだろう。すぐそこだからな!」
「そうですか…………止めはしませんけどね」
「お前も行くんじゃ!」
「…………」
「嫌そうな顔をするな!!」
モルパはユルリックを引っ張りながら自室を出るのだった。
馬車が宮殿の馬小屋(馬小屋と言うには余りにどでかいが)から広間に出ていた。。
その豪華さと仕様が見慣れたものでない事から、馬小屋を出る前からそれがオーストリア女王の物だと重鎮達は察知していた。
その馬車が出てきたのだ。
中に誰が乗っているかは言うまでもない。
報告を受けた重鎮達と女王来仏の情報を漏れ聞いていた者達がここぞとばかりに馬車をめざした。
明日の謁見を待ちきれずに他の者を出し抜こうとする者達だった。
「おお、馬車が馬小屋の外に出ておるぞ!」
報を聞いて駆けつけたモルパとユルリック。
女王の姿は無くすでに馬車に乗り込んだとモルパは思った。
つまり出発直前。
「今度こそご挨拶を……」
しかし物々しく護衛に囲まれた馬車に強引に入り込むのは女王の意に反するのでは……
モルパの脳裏に先日の女王の圧倒的な威圧感に触れた時の事が浮かんだ。
などと考えている内に馬車が動き出した。
「あ、いかん!」
焦るモルパ。
「モルパ様、どうします?」
「ええい、追うぞ!ユルリック、付いて来い!」
「追うって、どこ行くんですか?」
「追えば分かる!」
二人は馬車を追い駆け出した。
馬車を追いかけ始めたのはモルパだけでは無かった。
モルパ同様駆けつけた者達は彼に習って追いかけるしか無かったのだ。
サブタイトル分かりにくいかも知れませんが馬車を追う手段が足を使ってと言う意味です。
わざと分かりにくくしてどうすんねん。
ところで。
新年明けましておめでとうございます。
と、正月にお読み頂いた方に御礼申し上げます。




