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第四百十四話 やっと引き剥がされる




 



 「うおお! やっぱり 我 慢 で き ぬ〜〜!!」

 

 瞬間テレジアはマリーに飛びかかっていた。

 マリーは宙を舞う母を両手を伸ばして受け止めようとした。


 「お母様〜!」


 テレジアは手を後ろに回していた。

 頭を突き出し娘の顔を焦点を定める。

 マリーは避けもせず母の顔を笑顔で待ち受けた。

 母と娘の額と額が間近に接近した。


 ごんっ!!


 二人の額がぶつかり激怒の顔と満面の笑みが合わさった。

 

 「マ〜リ〜ア〜〜」


 「お母様〜」


 二人は抱きつき組み付き合った。

 額と額はくっついたままで離れず、まるで首相撲の様になっていた。

 双方の護衛が慌てて二人を引き離そうとした。


 「女王様!」


 「マリー様!」


 護衛が四人がかりで引き剥がそうとするが、二人のおでこはまるで磁石でくっ付いた様な感じ中々剥がせない。

 

 「う〜ん、せーの!!」


 何故か両国の護衛が息を合わせて引っ張りだした。

 

 がばっ


 やっと額と額が離れた。

 離れ際に怒り顔と笑顔が睨み合った。

 

 「ぬうう〜」


 「うふふふ」


 二人の引き離しが成功した所で王が声を上げた。


 「テレジア殿、もう一度言いますが今日の所はここまでで。明日またお会いしましょう。よろしいかな?」


 声に威圧感はまるで無く棒読みに近かった。

 国王にすればそれが精一杯だったのだろう。


 「…………」


 テレジアはマリーに目を合わせたまま言葉を吐き出した。


 「マリア…………覚えてなさいよ〜〜!!」


 「はい! 忘れません!」


 「この! 相手になってやる〜〜!!」


 毒づきながら護衛に引っ張られながら女王は退室していく。

 マリーは終始笑顔を崩さず見送っていた。

 ドアが閉まってからビスケ達の悲鳴に近い声がひとしきり聞こえた後、国王は大きく息を吐いてしなだれた。

 

 「なんと…………大変だった……」


 「ああ〜、楽しかった!」


 やっと護衛の手を離れたマリーが王と対照的な感想を述べた。

 額の真ん中が赤くなっているが痛みは全然感じていないみたいだ。

 国王は怪訝そうな顔でマリーを見た。


 「あれで…………楽しかったのか?」


 「はい。お母様もお元気で何よりでした」


 「…………確かにお元気だったが……大そうお怒りだったようだ」


 「はい。昔からよく怒られてました」


 嬉しそうに言う妻に違和感を感じるがそういう事には慣れている。


 「しかしあの怒り方は尋常では無かったぞ」


 「確かに私もあれ程怒った母は見た事ありません」


 「いや、それでは楽しかったと言ってる場合ではないのでは?」


 マリーは笑みを少し控えめにして答えた。


 「小さい頃は母に怒られるのが怖くて辛かったです。どうしてこんな怒るのだろうと」


 マリーの目が遠くを見る様になった。


 「その時ヒバリコ先生は心身を鍛え育てなさい。女王様の怒りを受け止められる位に。そうすれば女王様の怒る気持ちをも理解できるようになる事でしょう、と助言下さいました。その後私は修行の末、母の叱咤に耐えうるど根性を身に付けました」


 「ど根性…………?」


 「はい。そしてフランスに渡り王女、王妃となり……今となって母の気持ちも理解できるのではないかと思う様になりました」


 「それで……理解できたのか?」


 マリーは首を傾げた。


 「それが……まだちょっと…………」


 (分からんのか〜?! あれだけの事を引き起こしたのに〜)


 王は心の中で突っ込んだ後改めて言った。


 「理解できれば良いな」


 その言葉にマリーの顔がぱっと明るくなった。


 「はい! 必ず!! …………もちろん理解できても賛同はできないでしょうけど……」


 「まあそうだな」


 「お母様もそうでしょう。ですけど互いに理解だけでもできれば、と思います」


 「うむ」


 うなずく王だが頭の中に女王テレジアの剣幕がちらついてきた。


 (理解とかどうとかで…………あれ何とかできるのか〜?)


 

 

 


 決戦は明日に持ち越し。

 しかし後回しにしただけ。

 その間溜まりに溜まった怒りのエネルギー。

 吐き出す時はテレジアはどんなだ?

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