第四百十三話 堪え切れるか
(で 〜 き 〜 る 〜 か 〜!!)
テレジアの意志はその表情たたずまいで一目で分かった。
国王は弱りきってしまいうつむき加減で両手を頭に添えた。
マリーは王に近寄り耳元で囁いた。
「あなた、ここまでおっしゃって下さり本当にありがとうございます。感謝この上ありません。後は私に母の扱いをさせては頂きませんか?」
「いや…………それでここまでの騒ぎになったのだろう。また君に任せてどうする?」
「うっそれは…………」
これは的確で図星の意見だった。
王は顔を上げた。
「やはり……私がやるしかない」
そう言うと彼はテレジアに向き直った。
凄まじいオーラを発する彼女に静かに話しかけた。
「オーストリア女王マリア・テレジア殿。私は…………この国の、フランス王国の国王ルイ十六世である。我が国の最高権力者として進言する」
声はか細く力強いとはとても言えないものだったが、その言葉の内容は威厳に満ちたもの。
「一旦拳を下ろし王妃の行状をじっくりと再確認願う。貴女は栄えあるオーストリア女王で客人だがここはフランスです。フランス国王たる私の進言を受け入れてはもらえないか?」
「ぬうっ!!」
王の言葉に流石のテレジアも息を呑んだ。
母娘の争いがフランス国王がからんだ結果、国同士の交渉っぽくなってしまった。
相手国の王が言っているのだ。
無下にすると国家間のこじれに発展する恐れがある。
(むううううう〜〜…………こちらは招待された身! 国王が祖国を背景に物申すなら……こちらも礼節を以て対応せねばならない!)
内に秘めたる激情を、いや外にも漏れ出る激情をテレジアは抑えねばならなくなった。
(ぬううううううううう〜!)
なんか力ずくで何かに耐えようとしているテレジア。
それを見て皆がその異様な姿を驚き惑いながら見入っていた。
「……テレジア殿?」
恐る恐る王が問いかける。
「国王様…………私は貴女のおっしゃる事に……納得できません!! しかしあなたがフランス国王としてその様に頼むなら…………頼むなら……私はその意志に応えねばならない…………」
「おお、分かってくれましたか!」
安堵と歓喜の入り混じった表情で国王は肩を下ろした。
メルシー伯がテレジアにそっと声をかける。
「そ、それでは一旦貴賓室に参りましょう。休息をとって落ち着きましょう」
「ぬぬぬぬぬう〜〜」
やっと護衛の手が離れ轟然と立ち尽くすテレジアは国王を睨んで一言漏らした。
「国王様……明日から…………娘の行状を、見させて頂きます……綿密に!!」
「あ、ああ、分かりました……」
汗かきながら答える王の傍に立つマリーが進み出た。
満面の笑顔だ。
「お母様、ありがとうございます。明日より私がお母様のお相手をさせて頂きます。楽しみにお待ち下さい」
(相手ぇぇ?)
相手をすると言う言葉にテレジアが反応する。
「むむむむむう〜っ!!」
女王はマリーを凝視すると咆哮をあげた。
「うおお! やっぱり 我 慢 で き ぬ〜〜!!」
我慢が足りない女王様。
いや、十分我慢したか。
いい加減なんとか矛を収めてもらわないといけないのですがw




