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第四百五話 組み付き抱きつく






 「マリー様、とにかく一旦離れて下さい!」


 「テレジア様、お離れを〜!!」


 双方の護衛達が抱き付く、或いは組み付く二人を引き剥がしにかかる。

 今まで離れる様に散々声をかけてきたが全く離れる気配が無かった。

 王妃と女王なのでおいそれと手を触れ、しかも力づくで引き剥がす訳にはいかなかったが、最早それ以外打つ手が無くなっていた。


 「この〜うつけ者〜!!」


 「お母様〜、うふふふ」


 二人を引き剥がすどころか振り払われそうな勢いだった。

 主にテレジアの方が元凶だ。

 とても六十代の女性とは思えない。

 マリーは暴れる母を柳に風と受け流し悠然と微笑んでいる。

 これはいかんと思いつつカークは母娘をひっぺがす術を考えていた。


 「マリー様、再会を喜ぶ気持ちは分かりますがこの辺で一旦気を落ち着け下さい! 一日早くなりましたが国王様も女王様をお待ちしておられるはずです。ここは冷静に次の事を考え下さい」


 果たしてこれでうまくいくかどうか……


 「う〜ん……分かりました。おっしゃる通りです。取り敢えずは……」


 「マリアアア〜!!」


 母の方は相変わらずだった。

 マリーは体を脱力させると母の手をするりと抜けた。

 この機に護衛が一気にテレジアの前後左右にまとわり付いた。


 「女王様〜、ここは控えて下さい〜!」


 「ええい、離さんか〜!!」


 「お母様、今日はパリで旅の疲れを癒し下さい。明日ヴェルサイユでまたお会いしましょう。ではお待ちしております」


 マリーは笑顔を絶やさず母に背を向けその場を立ち去ろうとした。


 「待て〜!!」


 両手を突き伸ばすテレジアからマリーは離れていった。


 「ぬぬぬぬうう〜……」


 鬼の形相でテレジアはマリーを見送っていた。

 馬車の周りは野次馬が集まり出していた。

 一体何事かとばかりに。

 彼らの中にマリーはともかくマリーにつかみ掛かっていた女性がオーストリア女王と気付いた者がどれだけいただろうか…………


 


 

 「あれは一体なんなんだったんだ?」


 野次馬の中の一人の男が走り去る馬車を見送りながらつぶやいた。

 

 (確か若い女の方は王妃じゃないか? しかも確かお母様と言ってなかったか?)


 という事は。


 (もう一人の声のばかでかい婆あは…………ええと……オーストリアの女王か!?)


 名前までは知らないがそういう事になる。


 (そんな大物が来てるのかよ? 一大事じゃねえか!)


 しかしそんな話は全くパリの間で噂にもなってない。

 

 (……お忍びかよ? だとしたら…………これはフィリップに報告すべきか)


 男は馬車の後をつける事にした。





 一度くっ付いたら離れない。

 剥がすのは大変。

 母と娘の絆はあまりに強い?

 一旦離れた女王と王妃が再びぶつかると日は近い……というか明日ですねw

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