第四百四話 再会、母よ
…………二人の視線がぴたりと一直線につながった。
テレジアは地の底から響き渡るかのごとき声を絞り出した。
「アントニア…………マ〜リ〜アァァァ〜〜!!」
呼ばれた方の顔がほころんだ。
「…………お母様〜〜!!」
「マリア〜〜!!」
「お母様〜〜!!」
呼び合いながら二人は歩を進め距離を詰めていった。
従者と護衛達が慌てて馬車から降りてきた。
カークとビスケも慌てて下水路から這い上がってきた。
二人は間近まで近付くと歩を止め対峙した。
母は憤怒の表情を隠さず、娘は笑顔を絶やさず見つめ合っている。
双方の護衛達が固唾を呑んで見守る中、マリーが一歩前に踏み出し両手を差し出した。
「お久しぶりです、お母様!」
「ええい!! 、触れるな〜!!」
怒号がぶつけられマリーの両腕が止まった。
「その薄汚れた格好は何ですか〜〜!!」
テレジアの目に映った娘の姿は平民が着る様な粗末な衣装。
しかも所々に汚れがへばり付き、足元はくすんだ色に濡れていた。
怒鳴られたマリーは即座に返答した。
「ああこれですか。パリの下水道の清掃の試行に立ち会っておりました」
「なんであなたが立ち会うのですか〜〜!!」
「パリ浄化は私が提案し実行の運びとなりました。なので自ら現場に赴き立ち会っております」
「だからなんで立ち会うだけで汚れてるのですか〜〜?!」
「はい。この事業は私が責任持って行っているので下水路の細部まで確認しております」
「そんなものは下々の者に任せればいいでしょうが〜〜!! あなたはこの国の王妃なのだから〜〜!!」
「任せっきりにできないんですよね〜」
「何でですかああ〜〜!!」
「それは……」
「それは!?」
「……私がやりたいからで〜す!」
「こ の お お お〜〜!!」
テレジアはさっき触れるなと怒鳴りつけたマリーにつかみかかっていた。
マリーは待ち構えた様にテレジアを抱きしめた。
「ゆ る さ あ あ あ ん!!」
「ああ、お母様〜!!」
沈みゆく夕日を背景に揉み合いながら抱擁を続ける母娘の姿を見守りつつ、両国の護衛達はどう対応していいのか分からず途方に暮れていた。
「 マ 〜 リ 〜 アァァァァ〜〜〜!!」
「 お 母 様 ぁぁぁ〜〜〜!!」
遂に再会!
愛と憎悪の? 抱擁。
果たして母と子の戦いの行く末やいかに。
などと言ってますが格闘しちゃいけないでしょう。
どうしましょう?




