第三百九十三話 いい手はあるか
「もう既に一部下水道の掘り返しは始まっていますが…………」
マリーは下水道沿いに歩き出していた。
時々建物によって断ち切られている水路を見下ろし首をかしげる。
「それは家の下に隠れた水路以外の部分から行われています。隠れてない水路を全部やり終えてから家屋の下の蓋をされた下水道の処理をします。問題は下水道のゴミを処理するには建物自体が邪魔になる場合です」
バジーが言葉を繋いだ。
「つまり家屋を取り壊すって事ですね」
「はい。そういう場合もあり得ますね」
「下水を繋ぐ為に棲家を失う人が出てくる。これは大事ですぜ」
「ですので出て頂く方には万全の保証をしなければいけません。次の棲家を事前に決めておく事や金銭面の援助など色々ありますね。何よりご本人に納得して頂かねばならないので大変です」
「金と手間がかかると。さっきトーマスに金貨と書面用の紙を渡したのは金だけじゃなくその後に手間のかかりそうな厄介事が起きると考えて……それで目安箱まで口に出したって訳ですか」
「ですね。この事業は私の名で行われる事になりますから、絶対に生半可な対応処理をする訳にはいかないです。誠心誠意で事に当たらせねば……」
「市民から不平不満が噴き出る」
「そう、そうなれば…………糞の王女の名が地に落ちますね」
「えっ、いや、それを気にしますか?!」
「いえ、気にはしてはいませんが重要なのは民の不満を最小限に抑える事です。民の側の気持ちになって事を当たります」
「マリー様…………」
「はい?」
「どれだけ細心の注意を払ってもこの事業は反感を買いますぜ。家を立ち退かせるんだから」
「それは分かってます……」
「それでもやるんですか……」
「はい。立ち退く民に徹底的に寄り添います!」
言い切るマリーにバジーは思案顔で言った。
「立ち退かずに下水をなんとかできればいいんですがね〜」
「それも考えてはいます。下水が綺麗になれば蓋をしなくても悪臭はしないと思いますが……」
「蓋がないと住んでる人には危なっかしいかもしれない」
「格子状の鉄枠でも取り付ければ……まあ浄化された後でないと臭うでしょうが」
「一軒一軒事情が違うだろうから……気の遠くなりそうな話だぜ」
溜息つくバジー。
「そんな家が一体何軒あるのやら…………」
「現在調査中です」
話し出したらきりが無い。
いつの間にかマリー達は馬を繋いだ小屋まで帰って来ていた。
カークがマリーに近付き問いかけた。
「どうされます? 移動して別の家を見回るのですか?」
「…………そうですね、まだ見てみたい建物はあるのですが……今回はこれで終わりとしましょう」
マリーの周りをほっとした表情が取り囲んだ。
「カジェさん、今日はお付き合い頂き誠にありがとうございます」
「いいよ、前金もらってるからね」
当然ただ働きでは無かった。
「ではこれで失礼致します」
マリー達は馬に乗り帰路に向かうのだった。
課題を抱えたまま帰宅。
このまま終わらす気は無いでしょうがどうするか?
糞の王女の名を汚さない為にも、って言い回しおかしいかw




