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第三十九話 雪道の灯火






 宿に入ったマリー達は手続きを済ますと、予約したおいた通りにそれぞれの部屋に向かった。

 宿の部屋割りはマリーとビスケ、カークとバジー、フィリップの三部屋を利用する。

 今から夜の九時までは外に出られる。

 傘は元々持ってるから雪も大丈夫だろう。

 マリーは踵の低い靴に履き替えフィリップの部屋を訪れた。


 「お父様、お部屋で少しお休み下さい。私達だけで外を散策しますので」


 「あ、いえ、私もご一緒させて頂きますので、全身全霊かけてお守り致しますから……」

  

 「お父様!」


 「は、はい〜!」


 「親らしく勤められないなら無理せずこちらでお休み下さい。ここまで良くやって下さいました。感謝いたします。それでは行ってまいります、お父様」


 「……行ってらっしゃいませ」



 

 既に五時を回っている。

 雪で来るのが遅れたからだ。

 辺りがかなり暗くなっていた。

 雪空だから尚更の事に。

 マリー達は全員傘を刺し、歩いて街を回る事にした。

 

 パリの芝居小屋は主にブルヴァール大通りに集中している。

 しかしマリーの宿はそこからテームズ川を挟んで南の位置にあった。

 リュクサンブール宮殿という公園に囲まれた場所の近くだった。

 芝居を観ないのだから問題ないだろう。

 それでも芝居を観に行くのであろう馬車が積もり出した雪の上を走りすぎていった。

 マリーが呟いた。


 「こんな雪でも観に行くのですねえ」


 「雪で滑って事故にならないのを願う次第です」


 カークが相槌を打つ。

 その時、背後から刺すような光がマリー達を照らした。

 暗がりの雪道が白く輝きくっきりと影を映した。

 マリーが振り向くと。


 道の真ん中に吊るしたランタンに火を灯す人影が見えた。

 反射鏡の付いたランタンの鋭い光が目に眩しい。


 「少し早いですな。この天気ならその方が良いですが」


 カークが説明し出した。


 「六時頃から一斉にオイルランプに灯りを灯します。パリの街に一晩中消えない光を与えるのです」


 「……」


 「ただし天に月が輝いてる日は灯りは節約されます。前にマリー様が訪れた時は雲一つない夜でした」


 「パリ中にこの灯りを多くの人が灯すのですか……一斉に!」


 「そうです。これがパリの力です……」


 マリーの瞳に高揚感が宿る。


 「こういうのを見たかったのです!」


 灯りは一つ一つ灯されて行き、やがてマリーを通り過ぎていった。

 街路を伸びてゆく灯りを見送りマリーはたたずんでいた。

 

 「あの灯りが……人々の役に立つ光であらん事を願います」


 「朝六時になると専門の人夫がまた消しにきます」


 「それはまた大変な……こういう人達にパリの街が支えられているのですね」


 「ただこの雪ではそれまで灯りが持つかどうか……」


 「まだ改善の余地があると?」


 「オイルランプは去年導入されたばかりですしね。気長に待ちましょう」


 「……それでは次は……」


 「うえっくしょん、寒い!!」


 バジーがくしゃみをした。

 確かに雪はまだ降り続いている。

 こんなとこで立ちっぱなしでは冷えるばかりだ。


 「とにかく外はきつい!カフェでも行きやしょう」


 「私も賛成です!ホットミルクでも飲みたい気分です」


 ビスケも同意した。

 マリーも特に依存はない。


 「それでは手頃な店を……」





 

 と言うことで見たい物を見るマリーでした。

 夜はまだまだ長いです。

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