第三十五話 暴れん坊、漏れ出す
「…………暴れん坊……王女と」
おおおおおおお〜う!
大いに湧き立つ観衆。
国王もデュ・バリーもあっけに取られてしまった。
ショワズールはやっぱりそんな類かとため息付いていた。
マリーは相変わらず笑顔を絶やさず皆の反応を眺めていた。
「うふふふ、私は自分ごときがそのような大仰な呼び名に相応しいなどとは思ってません」
「えっ?!」
これは言いすぎたか。
しかし謙遜してる様に聞こえたが?
「たださっきも言った通り何も気にしてませんのでお気遣い無く」
おおお〜う
「それではこの辺でおしまいにしましょうか?」
おおお〜う
「それでは国王様、デュ・バリー夫人様、ショワズール公爵様、それにご観覧の皆様、これで失礼致します」
挨拶すると背筋をぴんと伸ばして颯爽と部屋を立ち去ろうとするマリー。
ぱちぱちぱちぱち
おお〜う
マリーは観衆の拍手と歓声に送られて退出するのだった。
その後観衆達も満足したのかぞろぞろと退出して行った。
残された国王達は……
「……何だったのだろうな?」
「分かりませんわ……」
(マリア・テレジア様……なんで言ってくれなかったのだ?ただ娘をお任せしますだけでは言葉足らずにも程があるだろう!)
げんなりとしたショワズールは国王に向いて力無く言った。
「それでは……私は失礼します」
「あ、ああ。気をつけてな」
デュ・バリーも王に
「国王様、私もちょっと外の空気を吸って参ります」
「あ、ああ」
揃って退室する二人を見送り残された王は思いをめぐらせる。
(……何も考える気がしない……)
部屋を出た二人。
いきなりデュ・バリーがショワズールに食ってかかった。
「何ですか! あれは? あんな者を政略結婚で連れてくるとはどういう魂胆ですか?!」
「知らん、マリア・テレジアからは何も聞いておらん! ただ両国の関係強化のために受け渡されただけだ!」
「暴れん坊? 仮にも王女と呼ばれる娘をそんな肩書き付きで送り付けるテレジア様もテレジア様です! 本当に両国の関係強化するつもりですか?」
「関係強化したいのか?」
「!?」
「いつも貴女は私のやり方に反発してたであろう?」
「……国同士の共闘自体には依存はありません。たとえ貴方の企てでも」
「そうか。では何とかしないとならんな。お互いの為に」
「何がお互いですか!貴方の派閥なら貴方が何とかしなさい!」
「いや、うちの派閥とは決まってない。あの娘は親の言う通り動いてない」
「ではどうすると言うんです!?」
「ここは女同士、貴女に何とか出来はしないか?」
「なにぃぃぃ! てめぇこの私に押し付ける気か?!」
激怒するデュ・バリーの言葉使いが汚れ出した。
ちなみに彼女に付いていた二人の小間使いはずっと側に立っていた。
彼女達はタイミングを見計らって目を閉じ両手で耳を塞いでいた。
まさに阿吽の呼吸で行われるお約束の行動パターンなのだろう。
「いや、ここはマリー様を上手く手なずける手を」
「手なずけるぅ?あのマリーアントワネットをよ?!」
「ああ、できる事なら、はっ!」
突然当たりをきょろきょろ見回すショワズール。
「何?」
「いや、さっきもこうして言い合っていたらいきなりマリー様が表れて……」
「!……」
デュ・バリーも周りを見回した。
辺りには誰もいなかった。
顔を見合わす二人。
「よかった〜」
「何がよかった〜だ! この野郎が!!」
結局デュ・バリー夫人はつい弱気をにじませてしまうショワズールにぶち切れまくってその場を立ち去ってしまった。
「ああ……私は……どうすればどうなるのだ?」
そしてショワズールの迷走は今年いっぱい続く事になる。
マリーは今夜も先に眠りについた夫を見守りながら就寝する運びになった。
自分がやりたい事、やるべき事、使命。
それが形を成していくとしても、まだ青臭い王太子妃なのだ。
自分のまだ使っていない幾多の技能はまだ引き出しに収まった状態だ。
それを使う時までのお膳立てを続ける事、それが今やる事だった。
次は……夜のパリを確かめようか。
「では、おやすみなさい!」
ここまで来てあらすじが話と合わなくなってきました。
そろそろ修正を予定しています。




