第三十四話 公開問答観衆&マリー編
「では、ご質問を」
「お待ちなさい!!」
デュ・バリーが血相変えて突っ込んだ。
「このような場で平民と質疑応答など聞いた事ありません!!」
「あらそうなのですか?」
「そうです!」
国王の日常がいくら公開されているからといってもそれは劇場のようにである。
舞台の役者に観客が話しかけ、役者が答えるという事はない。
だが実際には会話してはいけないと言うルールは無いので、何となくそんな感じという程度だ。
「国王様、いけないのですか?」
「ああ、わしも気が向いたら観衆の声に答える事はあるが質疑応答などと言う本格的なものは無い」
「ましてや国王様以外の者まで巻き込んでなど……」
「私はいいですよ」
おお〜う
「では質問に答えるのは私だけと言う事で」
「な、何を……」
デュ・バリーは言葉につまった。
マリーが答えるだけなら自分に負担は無い。
しかしそれで本当に大丈夫か?
「国王様、よろしいでしょうか?」
「…………」
この部屋にいる皆が王に視線を集める。
「…………よろしい!」
おおおおお〜う
観衆の一際大きい声。
王はちょっと口元がゆるんだ。
「では、ご自由にご質問を」
マリーが観衆に向いて問いを促す。
一斉に全員が質問し出した。
「○×△×○×……」
声がごちゃ混ぜになって何言ってるか分からない。
マリーは慌てず指差した。
「では右端のあなた、ご質問を」
「んあ、あ、あの王女様、俺、すんごい噂聞いたんですけども……」
「はい?」
「牛殺したって本当ですか?」
「?!っ」
マリーの周囲が硬直した。
何の話だ?
しかしマリー自身は普通にしている。
「ああ、それは違いますね。どっから聞いたんです?」
笑いながら聞き返すマリー。
「屠殺場の前歩いてたら牛が逃げ出して来て、そしたらマリー様が牛を壁にぶっつけて殺したっちゅう話をしてた人がいた……そうな」
どうやら又聞きだったらしい。
それは尾ひれが付く訳だと王達が思っていると。
「逃げ出した牛は私の部下が金槌で倒しました。偶然牛が逃げた所を見かけたもので」
「そうですか……」
残念そうな右端の男。
「大体牛は頑強なんです。壁にぶつかったぐらいで死にはしません。ぶつけた当人が保証します」
「えええええ!?」
全員一斉に声を上げた!
今一体何を言った?
気にせずマリーは続けた。
「はい、それではお次の方」
「……」
次と言われてもその前の言葉の意味が説明されてなくては……
「あらもう終わりですか?」
「い、いえいえまだあります〜!!」
観衆の一人が慌てて叫ぶ。
「あの、牛を壁に……」
「それはもうお話ししましたわよ」
「あ、えっえっと、」
「他には?」
「あ、あの、馬で噴水庭園を走り回ったとか」
「はい、でも誰にも怪我をさせてませんよ。馬術は八年やってますので大丈夫です」
「いや、聞いた話では剣を持った暴漢共を噴水に投げ込んだとか」
「何?!」
国王が声を裏返させた。
そんなの聞いてない。
「それは馬と関係ないのでは?」
「しかし庭園で……」
「場所が同じなだけですね。ショワズール様、暴漢を退治したのは……」
「へっ?」
急に名を呼ばれて狼狽えるショワズール。
あの時は自分が後始末をさせられたのだった。
「あれは確か……マリー様の部下が退治したと……」
「はい。という事になっています」
「??」
という事になっているって何?!
とても気になるんですが。
しかしマリーはそんな観衆、およびその他の人達の疑問を置いてきぼりにして話を進める。
「お次の質問は?」
観衆の一人の中でただ一人の貴族が聞いた。
「マリー様……貴女は今市民から何と呼ばれているかご存知ですか?」
「はい?知りません」
「そうですか……」
「うふふふ、遠慮せずに。何と呼ばれようと気にしませんので」
「え、あの……その、お転婆姫と」
「あら、お気遣いありがとうございます」
さすがに本当の呼び名は言えなかった。
しかし本人に見抜かれたらしい。
本当に気にしてないみたいだ。
だったらもう少し突っ込んでみていいかも。
「私は貴女様が呼び名に違わぬ方か知りたく存じます」
「うふふふ、それは私が決める事ではありませんよね」
「実は私はマリー様がオーストリアで何と呼ばれていたかを聞き及んでます」
「あ〜、あれですか」
「ご、ご存じで?」
「フランスへお越し入れする前に耳に入りました」
「言って……良いですか?」
「どうぞお好きに」
「…………暴れん坊……王女と」
おおおおおおお〜う!
そろそろマリーの何たるかが漏れ広まってきました。
あらすじの修正も必要かなと思ってます。




