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第三十話 脱帽






 「無駄です。剣を納めなさい」


 「どこがだ〜! 手ぶらで何をぬかす!」


 頭目が突いた剣を前進しながらかわすマリー。

 腕にマリーの手が届かんとした時、後ろに跳んで間合いを開ける頭目。

 少しはできるのかな、とマリーは思った。

 ならば奇手を使ってみようか。


 構え直した頭目の剣が斜め上から振り下ろされんとした時!



 解き放たれた金髪がマリーの上半身に降り注いだ!!



 剣はマリーの両手で受け止められていた。

 革製の帽子を間に挟んで。


 あっけに取られる頭目の剣をマリーが腰を入れて下方に捻るとあっさり手から離れ落ちてしまった。


 戦いの輪に入っていなかった男がつぶやいた。


 「あの金髪……間違いねえっ」


 カークはその声を聞き逃さなかった。


 (気付いた者がいるのか。ならば!)


 カークはまとわりついていた男二人を振り払うとマリーの傍らに進み寄った。

 大きく息を吸って声を張り上げる。



 「ええい控えい控えい! この御方をどなたと心得る! 栄えあるフランス王国の王太子妃マリーアントワネット様にあらせられるぞ!!」



 ど〜〜〜ん



 空気が一変した。

 戦闘不能の者もまだ戦っていた者も金髪をなびかせたマリーアントワネットの姿に釘付けになった。


 「う、嘘だ〜!」


 頭目が叫ぶ。

 その目には涙まで浮かべている。

 

 「兄貴、嘘じゃないです。俺マリーアントワネット、様、の顔知ってます」


 「何〜!?」


 「お、俺も結婚式を見に行ってた。この人だ、やっぱり」


 「馬鹿な……」


 最初にマリーの正体に気付いた男がマリーに向けてひざまずいた。

 続いて他の男達も次々とひざまずいていく。

 頭目が周りをきょろきょろ見回すと、自分が最後の一人だと知った。


 「……」


 ぶひひひ〜ん!!


 「わっ」


 銀星号のいななく声に脅されるようにして頭目が片膝を突いた。

 マリーはそれまで戦っていた男達が自分を囲んでひざまづく姿を見下ろしていた。

 倉庫の入り口から一陣の風が吹き抜けマリーの髪をたなびかせた。

 ひざまづいた男達には彼女の姿がどれだけ荘厳に見えた事であろうか……




 「ふ〜、片付きましたな」


 「はい、しかし私の名でこんな形になるとは」


 「それだけマリー様の威光が凄いって事です!私も金髪晒した時のマリー様に痺れました〜」


 カークがひざまずいた男達を見回しつつ問いかけた。


 「にしても、マリー様こいつらどうしましょう?」


 「……まず素性を確かめましょう」





 男達の頭目は領地をかなり抱えた貴族の息子だった。

 手下共はその領地で田畑を耕す小作人のせがれ達だったのだ。

 放蕩息子の言うがままに暴れる不良達と言ったところだろうか。

 言われてみれば頭目を始め彼らの年齢は二十歳前後といった所だった。

 結局彼らはパリ警察には引き渡さない事にした。

 放蕩息子については、父親に直接事情を話して更生に向けて厳重に指導するよう言い渡す事にした。

 手下達は今後は農作業に勤しんで親孝行する事を約束させ解放した。

 マリーアントワネット王太子妃に刃を向けた罪で極刑となるのを防ぐための裁定だった。




 倉庫を出たマリー達をバジーが待ち構えていた。


 「いや〜すげえもん見せてもらいやした」


 「とにかくバジーさんの×××が戻って良かったです」


 「だからそれ言っては駄目ですってば!意味わかってないでしょう」


 「そもそもバジー、お前がこんな名を付けるからだ。今日、馬を奪われたのもお前のせいだぞ」


 「いやあれはちょっとうっかりよそ見していたら……」


 「うっかりだと!なんて事だ」


 「これからは物知りバジーでなくうっかりバジーと呼んじゃいましょか?」


 「うふふふ、うっかりですか」


 「勘弁してくれよお」


 「ところで……」


 カークが声の調子を変える。


 「マリー様をお守りするつもりがまた矢面に立たせてしまいました。私の至らぬが故に」


 「いえ、私が出たがりなのですよ」


 「出たがり、ですか。もっと早くマリー様の正体を知らしめる事ができれば事の解決も早かったはずですが」


 「やめて下さい! 自分の地位権力をひけらかすのは恥ずかしいです。私は名前は言っても肩書きは言いませんよ」


 「そうですか。ではこれは私のこれからの課題とします。と言う事で……」


 「もう帰るのですか。予定外の事があったから仕方ないですね」


 「また何度でも来れるじゃないですか! パリには面白い事もたくさんあるんですよ〜」


 ビスケの明るい声にマリーも笑みをこぼした。


 「そう、まだまだ見聞すべき事は沢山あるんですよね」


 マリーはひらりと馬にまたがった。


 「では、ビスケさん、カークさん、うっかりバジーさん、行きますよ!」


 「はいっ」


 「はっ」


 「なんだ俺まだうっかりなのかよ〜」


 

 こうして四人は帰路につく事になった。

 二度のパリ見聞でマリーの中で少しずつ目的の為の具体的な手段が形作られていた。

 その一方、パリ、ヴェルサイユではマリーに対する周りの認識が前例の全く無い形で形成されていくのだった。

 のちに様々な異端の名称で呼ばれる事になる彼女が最初に冠する呼び名……






 …………暴れん坊王女

 






 やっとやりたい事の一つができました。

 色々と今までお膳立てして来ましたが長かったです。

 水戸黄門ごっこをやってみたかったのです。

 後やる事は王女になってからでしょか?

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