第二十四話 旧交を温める
「よう、マリーの嬢ちゃんじゃねえか!」
「ガブリエルさん、約束通りまた来ましたよ〜」
もおおおう〜
牛の吠え声の中、図体のでかいおっさんと少女手を取り合って笑い合う。
ここは前回マリー達が訪れた屠殺場だった。
「どうですかお銚子は?」
「相変わらずだよ、わっはっは」
事情を知らないバジーがその有り様をぽかんと見ていた。
「おい、カークさんよ、あれは一体……」
「あれがマリー様の特殊技能だ。平民と無造作に仲良くされる。お前の時もそうだったろう。それに……」
「今、屠殺の最中でしたか」
「ああそうだ」
「まあ、途中で抜けて大丈夫ですか?」
「俺一人くらいなら大丈夫だ。嬢ちゃんが来たのに放っとけるかよ!」
「そうですか、わざわざありがとうございます。失礼な事を聞きますがあれから牛が逃げたりした事はないでしょうか?」
「ないない、気を引き締めてやっとるよ」
「それは良かった」
「嬢ちゃんが来る前は時たま牛を逃してもしょうがねえや、そう言うもんだと思ってたがな。少し気が変わった」
「そうですか、それは良い事だと思います」
「嬢ちゃんのおかげだ、わっはっは」
「お元気な笑い声ですね。私も笑う事が大好きでいつも……」
(ここだ!!)
カークが談笑する二人の前に飛び出した。
「マリー様、ご用事がありましたよね!!」
「ああ、そうでした。ガブリエルさん、屠殺の方は相変わらず棍棒ですか?」
「ああ、あんたらが紹介したとこはやっぱり高いし作るのに手間がかかるってんだ。そう簡単にはいかねえよ」
「なるほど。ではカークさん」
「はっ」
カークは手荷物から大金槌を取り出し、ガブリエルに差し出した。
「マリー様がおっしゃっていたお土産です。私が使っているのと同じ物を取り寄せました」
「ほ、本当に持ってきたのかよ?気前良すぎるだろ。いいのかよ、お嬢さん」
「構いません。これで少しでもお仕事がうまくいくなら。ぜひ受け取ってください」
「ありがとよ。恩に切るぜ」
カークは一歩下がってバジーと並んだ。
声を顰めてバジーに囁く。
「分かったか。放っておくと話が横道にそれて取り留めなくなってしまうのだ。私が止めねば誰が止める、と言う有り様だ」
「ふーん、別に止めない方が面白いんじゃねえか?」
「貴様!……」
カークはこの時バジーにつかみかかりそうになった。
「私が、私がどれ程苦労していると思っている!! もはやお前も他人事で済まされる立場ではないぞ! 後戻りが出来ない程に関わってしまっているのだ!!」
「何でそこまで思い詰めてんだよ! 何があったんだおめえに?」
「お前は……まだ分かってない! 忠告する。いい加減に野次馬気分は捨てる事だ」
ぶうんっぶうんっ
「うふふふ、剛力ですわね」
(うわ〜……何かややこしい事になってる……)
ビスケは言い争うカーク達と、金槌を試しに振り回しまくるガブリエルを楽しそうに見ているマリーを見比べながら独りたたずむのだった。
「ところでガブリエルさん。貴方達の解体したお肉はどこへ行けば食べられるんですか?」
「うん、何だ?食ってみてえのか?」
「はい。ここにはご縁がありますから」
「う〜ん、そうだな。うちの肉を仕入れてるので手頃なのな……」
少考してからガブリエルは答えを出した。
「それならこの近くにオーベルジュ(宿屋兼料理屋)がある。仔牛の肉のラグー(煮込み)が食えるぞ」
「おお、そうですか。それではそちらに行きます」
「だがあそこは貴族様の行くとこじゃねえぞ。嬢ちゃん大丈夫か?」
「この格好ではいけませんかね」
会話を聞きながらぎりぎりだめかな、とカークは判断した。
レベルを下げても貴族は貴族だ。
「とにかく場所を教えてください。行くだけ行ってみます」
「なら俺から紹介されたと言え。あそこには俺が肉を届けに行く事もあるんだ」
「分かりました。色々とありがとうございます」
「あ〜気にするな。金槌もらってんだ、お釣りがくるくれーだ」
マリーはガブリエルから店の場所を教えてもらう。
カークがバジーに一言囁いた。
「会話は長いがこれはセーフだ」
「何言ってんだ? 基準が分かんねえよ!」
盛り上がりは終盤に任せて今はこんな感じです。
ご了承をw




