第百九十六話 モルパの行方
五月二日夕刻前。
テュルゴーはパリに到着するとアルベール警察長官とヴェリ師とで今後の対策会議を行っていた。
急遽中央市場近くにでっち上げられた対策室。
売りに出されたばかりの貴族用宿屋を利用したものだ。
そこには彼ら三人と護衛、そして……
「それでモルパ殿の行方は……?」
ヴェリ師の問いに答えたのは……
「まだ見つかってません。どこで何をしてるのやら」
答えたのはバジーだった。
彼は五月一日テュルゴーが急遽ヴェルサイユからパリに行く事になった時マリーの口利きで馬を用意したのだった。
夕刻だった事もあり彼が先導してテュルゴーを連れて行った。
その後とんぼ返りした時も翌日再度パリへ行った時も先導役を請け負った。
そして今の役目はモルパ探しだった。
昨日はモルパはパリの自宅に帰っていなかった。
「どっかで泊まり込みのパーティーでもやってるんでしょうかね?」
皮肉めいた言葉にヴェリ師が応える。
「私がここにいる事自体がおかしい。本来彼がいるべき所だ」
「私は貴方がいた方がほっとしますけどね」
テュルゴーの言葉にヴェリ師はため息をついた。
「君まで皮肉めいた事を言うのか。やれやれ」
「じゃ、俺は行方不明者探索に出ますよ」
バジーは低めのテンションで二人に告げると部屋を出ようとした。
「どうやって探すのだ?」
テュルゴーの問いにバジーはぶっきらぼうに答えた。
「まず家に行って在宅かどうか確かめますよ。そんでいなかったら……聞き込みですかね」
「あてはあるのか?」
「俺なりに何とか。全くなんで俺がこんな役を……」
たまたまモルパの顔を知っていた為にこうなってしまった。
「まあやる事はやりますよ。じゃ」
退室するバジーを見送るテュルゴーだが……
「あの男なら……見つけてくれそうだな」
ヴェリ師がテュルゴーの言葉に引っかかった。
「どうしてそんな事を言うのですか?」
「こことヴェルサイユを行き来する時先導してもらったのですが、その時の会話で感じたのです。かなりの切れ者です」
「ふむ。王妃腹心の部下の一人か。王妃もいい加減に部下を集めた訳ではないのですな」
「慎重に吟味したのでしょう」
王女時代に適当に集めたなどとは両人とも思いもよらなかった。
「それよりパリの護りの話を」
アルベールが口を挟んだ。
ごもっとも……
「ああ、それでは会議の続きを……」
バジーはモルパの自宅に訪れたがやはり不在だった。
召使たちに聞いてもどこへ行ったかは分からないと判で押したように答えが返ってきた。
嘘は言ってないだろう。
非常時だと言うことは説明してあるのだから、しらを切ってる場合では無いからだ。
「しかし……」
モルパ宅を出て外の景色を見回して見ると。
日の沈みかけたパリの街は普段通りの営みを見せていた。
「とても暴動が起きるとは思えねえなあ……」
と言うことは……
「もしやモルパのおっさん何が起きてるか知らねえんじゃないか?」
パリに舞台が移ります。
モルパが何故か目立ってる。
マリーはヴェルサイユにいるから出番がどれだけ作れるでしょか?