第百九十四話 宮殿に帰る
宮殿に着くとマリー達は早速テレーとテュルゴーの元に行った。
マリーが城下町をうろついていた事実に二人は驚かされた。
「それで街の状態はどうですか?」
うろついてた本人が聞くか。
「警備が行き届いているので大きな暴動はありません。数人程の小競り合い程度です」
テュルゴーの答えにマリーが当惑する。
では自分のが最大規模の競り合いだったのか。
「私も競り合いを見ましたが気になる事が……」
競り合いをしていたとは言わない。
「何です?」
「暴動を起こそうとする者達の身なりが意外と良い。サン・マルセルの住人より幾分良かったです。とても飢えて切羽詰まった様には見えない。ややもすれば暴動を起こすにしてはまだ余裕がある気がしたのです」
「前に言った飢餓ではなく値が高いから暴動に走るのですね」
「はい。切羽詰まらずとも暴動を起こす。これは民が以前より主張をする様になったと言う事でしょうか?」
「国家の支配力が下がったと?」
「いえ、民の権限が上がったのは悪いことではありません。ただその使い方を誤ると……」
「容易く暴動に走ると?」
「ですね……もっと民との信頼関係があれば……」
黙っていたテレーが口を開いた。
「それは今すぐできる事ではない。それより今は今日明日の事を」
「そうですね、今は……」
「ヴェルサイユの暴動鎮圧はほぼ成功しました。となればヴェルサイユで暴動できなかった者達がパリに流れ込む恐れが多い」
「そうなのですよ!」
テュルゴーが叫ぶ。
「だから私はまたパリに行きます。情報を整理したらすぐ!」
「では今の話を取り敢えず国王様に」
「分かりました」
三人は執務室から出た。
外で警護していたカークとビスケも追従した。
国王の執務室にマリー達が入ると座椅子にもたれかけていた王が顔を上げて出迎えた。
「おはよう、マリー。今朝、朝食に来なかったのは何故だ?」
「あ……」
夫の寝床に手紙を置いておいたのだが。
しかし……
『ヴェルサイユの様子が気になるので見に行きます。朝食は必要ありません』
これでは説明になってない。
「手紙ではヴェルサイユを見に行くとあったが……ここがヴェルサイユだよ」
「も、申し訳ありませ〜ん!!」
顔を真っ赤にして謝るマリー。
その有り様にマリーに同行して来た者全員が毒気を抜かれていた。
王妃よわよわではないか……
いや、それどころではない!
「国王様、ご報告いたします!」
「うむ」
ヴェルサイユはひと段落。
しかしまだ終わりではない。
次に備える必要がある。
さてどう備えるのでしょうか。