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第百八十九話 激怒


 


 

 

 「ど う 言 う つ も り で す か あ あ あ!!」



 怒号が響き渡ると同時にマリーは突進していた。

 勢いのままにぴょんと荷台に飛び乗った。

 目指すジャックの手前にいた男がマリーに立ちはだかった。

 マリーは男の足を軽くはらった。

 男の体が少し傾いたと同時にマリーは胸ぐらを掴んだ。

 瞬間男の全体重がマリーの攻撃力になった。

 男の体が回転し頭が真下になった所で荷台から落ちていった。

 ジャックが驚愕の表情を見せる。


 どさっと音がすると同時にマリーが一歩踏み込んだ。

 ジャックを睨み上げる。


 「あなた方は小麦粉が欲しくて安く売ってくれと言っていたのでしょう! そのあなた方が小麦粉を使い物にならなくしてどうするのですか! 大事な食料なのに!!」


 「な……何だ」


 怯むジャックにマリーは更にまくし立てた。


 「この小麦粉は……農家の皆さんが一生懸命畑で作業を行なって麦を実らせて刈り取って脱穀して……それを製粉してやっとできたのがこの小麦粉です! 多くの人の手で手間暇かけて作った小麦はパンとなります。だからこそ感謝の気持ちを込めて食べねばならないのです! それをどうしてこの様に邪険に扱えるのですか!?」


 「……この」


 「人は食べねば飢えて果てには死にます。だから食べ物は命の源、大事な物なのです! それを……それを!!」


 ジャックはこの女がただの平民ではないと察する事になった。

 だとしても一体誰だ?


 「ふざけるな!! おめえ本当に何者だ?!」


 「私は、マリーアントワネットです!」



 「…………?」


 ジャックもジョセフもその他の男も沈黙してしまった。

 何を言っているんだ?


 「おめえ……おかしいんじゃねえか?」


 「私が誰であろうと関係ありません! 小麦粉から離れなさい!!」


 「そうか…………もう女だからって容赦しねえ!! おめえら、かかれ〜!!」


 言いながらジャックは持っていた小麦粉袋を振り回した。

 破れた穴から小麦粉が噴出し白い煙となった。

 マリーは煙を避けて一旦荷車の下に飛び降りた。

 

 六人の男が荷車を背にしたマリーに襲いかかった。

 荷台からはジャックら二人が迫る。

 フランスの地でマリーが初めて経験する一対八の戦いだった。

 




 市場にマリーがいないと知ったカークとビスケは街で聞き込みを続けるうち、マリーに会ったと言うパン屋を見つけた。

 あっちの方に走って行ったとの話を聞き、取り敢えずその方向に向かう事にした。

 

 「どこに行ったやら……」


 「心配ですね」


 「マリー様の身に何かあったら……」


 「マリー様が何かしでかしたら……」


 「……心配だな」


 「……心配です」


 「一刻も早く見つけよう!」


 「はい!」


 二人は急ぎ足で街を探索し出した。






 

 ジャック達、マリーの逆鱗に触れてしまいました。

 どこが怒りの琴線なのかは人それぞれですが……

 マリーの場合はまさに人の命の元、食物でした。

 と言う事で……心配です

 

 

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