第百八十七話 同行
「私も……仲間に入れて……お、おくれ、よ」
「ん、どうした?」
ぎこちない言葉を投げかけるマリーに疑問顔の男。
「だから、仲間に。私はマーニャ……だよ」
「うん、そうか……いいだろう、お前中々いい女だしな。独り身か?」
「は、はい、そおだよ」
「おおそうか! 俺はジョセフだ。俺について来い!!」
機嫌が良くなったジョセフに肩を掴まれるマリー。
なんと単純というか下心丸出しというか……
取り敢えず上手く彼らに取り入れられたようだ。
「それでこれからどうするの?」
マリーが聞くとジョセフは胸を張って答えた。
「小麦粉調達用荷車を狙うんだ。小麦粉倉庫から出入りしてるそうだ。途中の道で捕まえる」
「小麦粉の値段を下げろと」
「まあな……」
「それで……いつまで隠れてるの?」
「えっあ!」
警備兵達はとっくに行きすぎていた。
「よっし! 俺について来い!!」
威勢の良い声でジョセフは先頭切って歩き出した。
「いいか、警備兵なんぞ恐るに足りん」
さっきの振る舞いと真逆のセリフを言うジョセフ。
「さっき隠れていたのは?」
真っ当なマリーの問いにジョセフは悪びれずに答えた。
「あれは数がこっちより多かったからだ。だがな、俺らの仲間はまだまだいるんだ」
「まだまだ……」
「ああ、あちこちにな。まあ、事を起こせば集まってくるさ」
「そう……なの」
「いいか、あそこら辺がいい。荷車の通り道だと聞いている。待ち伏せするんだ」
ジョセフは通りの角を曲がり路地に入った。
マリー達も続こうと角に入ると……
「ど、どうもご苦労様です」
ジョセフの声がした。
見ると五人の屈強そうな男にへこへこと挨拶している。
その中の一番の大男がジョセフの肩に手を置いた。
「おう、おめえも来たのか。よし、おめえらも加われ。これで大所帯だな。わっはっは!」
「へい……」
これまでとは打って変わって低姿勢のジョセフ。
(まあ色々あるのでしょうね……)
などと見ているマリーにジョセフがへこへこしている大男が目を向けた。
「ん、お前はなんだ?」
「あ、マーニャと言います。ジョセフさんと一緒に小麦粉を……」
「何、襲おうってのか? 随分根性あるじゃねえか。気に入った、一緒にやろうじゃねえか!」
「はい、襲うって言うか値段に文句を言おうかって思って……」
「なんだ悠長な事言ってるな。結局最後は此処だぜ!!」
掲げた上腕をぱんぱん叩く大男。
「俺はジャックだ、よろしくな。おめえ中々良い女だな。亭主がいるのか?」
ジョセフと同じ事聞いている。
マリーにとってはジャックもジョセフも大して変わらない印象だ。
「いないよ」
「お〜そうか、後は俺に任せておけ!」
マリーは心の中でため息をついた。
騒乱をたくらむ者にも階層があるとのことで。
考えてる事は皆同じかも知れませんが。
マリーの貞操の危機! とまでは行かないでしょうが。