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第百八十六話 もぐり込む

 マリーが潜入を試みています。

 カークとビスケの気も知れず。

 しかし潜りこまれた側はどうなっちゃうの?



 


 


 「それではこれで失礼します」


 「何を言ってるんですか!?」


 警備兵が叫ぶ。


 「王妃様がこんなとこうろついてどうなさるんですか!」


 「街の様子をちょっと……」


 「ちょっとじゃないでしょう! 宮殿にお戻りを!」


 マリーはうんざり顔になってしまった。


 (何でカークさんみたいな喋り方になるのですか? 何が皆をそうさせる?)


 自覚の足りないマリーは警備兵達をひょいっとかいくぐり走り出した。

 

 「あ、お待ちを!」


 追いかける二人だが距離が離れていく。

 

 「なんであんなに速いんだ?!」


 泡を喰う警備兵を振り切ったマリーは街の様子を見回しながら呟いた。


 「小麦粉がどうなのか見てみたいですね」





 カークとビスケはヴェルサイユの街にたどり着いていた。

 まず市場に向かったのはマリーと一緒だった。

 

 「……特に異常はないか」


 市場の様子を見回しカークは取り敢えず安堵した。

 警備が厳しい事もあろうが平穏を保っている。

 二人は巡回している警備兵に近づいた。


 「失礼、この辺りでマリー王妃をお見かけしませんでしたか?」


 「ええっ? 王妃!?」


 唐突な問いに警備兵が驚く。


 (見てないか……)


 「おい、王妃がどうした?」


 「もし王妃を見かけたらとにかく引き止めて全力で宮殿に連れ戻してくれ! 頼んだぞ!!」


 「えっ……」


 「他の兵にも伝えてくれ。ビスケ、他を探すぞ!」


 「はい!」


 当惑する警備兵を置いて足早に立ち去っていく二人。

 

 「次だ」


 「それで、どこを探すんですか?」


 「もちろんパンと小麦のある所だ!」





 マリーは小麦粉倉庫にでも行ってみたいと思ったが場所が分からない。


 「地図でも持ってくれば……」


 パリより地元のヴェルサイユを良く知らない事に今更ながら自己嫌悪になった。

 マリーは時々見受けられる警備兵達の姿を気にしながら格子状の路地をうろついていた。

 こうなれば……マリーは注意深く辺りを見回した。


 「不穏な人達から探しますか」


 自分が不審者とは考えてない。

 不穏な人を見つけるには……


 さっ


 マリーは向こうからやってくる数人の警備兵を避けて街角に身を隠した。

 

 「……あ、そうだ」


 今の自分の様に警備兵を見て避けたり隠れたりする者が不穏分子!

 これで判別できるのでは?


 と、その時マリーは背後に気配を感じた。

 振り向くと……

 

 四人の男達がマリー同様身を隠していた。

 

 「…………おはよう」


 「お、おう……」


 なんとなく目を合わせ互いに挨拶していた。

 

 「お前も……小麦目当てか?」


 「あ、はい……」


 話を合わせたマリーを見下ろし先頭にいる男が一息ついた。


 「なんだよ、受け入れ役の女か?」


 受け入れ役?

 他所から来た者を受け入れる役の人という意味だろうか?

 

 「まあ、そうです……」


 「受け入れ役がなんでこんなとこまで来てるんだ?」


 「私も小麦粉の値段に文句があって……」


 「おお、そうかよ」


 「なので…………」


 マリーはここで口ごもった。

 格好はいわゆる早朝稽古用の素朴な軽装なので疑われないだろう。

 髪も簡単に紐で縛っただけだ。

 しかし言葉使いには気をつけねば。



 「私も……仲間に入れて……お、おくれ、よ」







 

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