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第百八十話 出たがり




 


 「ふ〜む」

 

 首をひねるマリー。

 何か違和感でも感じてるような。


 「……そう。暴動はパリの外で起きたのですね。私はパリの外にまで手を広げてませんでした。まさに手の届く範囲から始めようと思ってましたから。一国の王妃なのに。私は国全体に行動範囲に広げるべきですかね?」


 また物騒なことを。


 「国務会議でも話には出しておきました。十八日の暴動の事を。そういえばマリー様は出席してませんでしたね」


 これは失態だったとマリーは思った。

 出席できない時もあるにはあったが、ここぞと言う会議には必ず出る事にしていた。

 しかしその日は市外へ遠征していたのだ。


 「じゃがいもの立て看板の緑の部分を塗るのに夢中になり過ぎて……何と迂闊な!」


 何の話だ、と思う二人だが聞かないでおこうと揃って判断した。


 「もし暴動が連鎖するとしてパリの内にいきなり飛び火するのか……市外から侵入してくるのか……だな」


 奥歯に何か挟まった様なテレーの言い方にテュルゴーが問うた。


 「何を言いたいんです?! 」


 「いや、勘みたいな物だが不穏な空気を感じている。パリの外で。しかし……」


 「しかし?」


 「内側は何というか……少し軽快な感じがしないでもない」


 テュルゴーのみならずマリーも疑問形になる。


 「何ですか……?」


 「貴女が気前良く当たり付きゴミで懸賞金ばら撒いたからパリの空気が少し和らいだんですよ!」


 「えっ……」


 「自覚してないですか? まあそんな目的でばら撒いたんじゃないでしょうが」


 「そうなんですか?」


 「私はパリの内と外でやや温度差を感じる。一時的なものかもしれませんが。王妃直々の宣伝活動がパリ市民の印象に影響を与えているのかもしれない」


 「それでパリの内と外で空気感の落差めいた物ができたと?」


 「もしかしたら市民もある種の期待を持ち始めているのかも。王妃ならまたやらかしてくれると」


 「やらかすって一体私は何なんですか!?」


 「まあ貴族階級には悩みの種で通ってますがね」


 「テレー師、そこまで王妃に言っていいんですか?! ご本人の前ですよ」


 「あ、いえ……気にしません……気にしませんとも!」


 ここで少しの間会話が止まった。




 「それでですね……」


 マリーが再起動する。


 「私は物価の上昇に対して一つの案を持ってきたのです。市場にじゃがいもを投入しようと」


 「ほう!」


 「じゃがいもですか」


 「しかし収穫は五月末頃です。もしも暴動が起きてしまえば間に合いません。量にも限りがあります」


 「ふうむ、お見えになったのはその話でしたか」


 「ええ。暴動がどうのこうので話が逸れましたがそう言う事です」


 どれだけ話が逸れ続けていたのだ。

 

 「効果的に市場に放出しようと思っていたのですが」


 「事情が変わっていたと」


 「ですね……何とかじゃがいもを市場に並べるまで暴動を待って貰えないでしょうか?」


 そりゃ無理だ……


 「王妃様、暴動の可能性を指摘した私が言うのもなんですが起きない可能性もありますよ」


 「いえ、最悪の場合も考えて慈善策を取るべきです。私もいつでも動けるように待機します」


 「えっ?」「えっ?」


 テレー、テュルゴーが揃って声を上げた。

 待機って……


 「私も市外へ出ます!」


 

 


   


 市外に出たがるマリー。

 行動範囲が広がるのは負担も大きい。

 特に周りの気苦労が……

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