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第百七十六話 末弟の悩み






 「クロティルドさん」


 「あ、はい……」


 彼女は王妃に恐る恐る振り向いた。

 大人しい娘だし王妃に距離も感じていただろう。


 「別に速読を覚えなくていいですから妹と一緒に遊びに来るつもりでおいでなさい」


 「えっ?」


 「それで楽しめればそれでいいのです。貴女は今年十五でしょう。今その時その時を楽しんでおかねば、ね」


 「……」


 クロティルドは俯いてしまった。

 王妃は察していると感じたのだ。

 今の自分と同じ年でこの国に嫁いで来たのだから。

 距離が近づいた気がした。


 「妹と一緒なら……時々お伺いします」


 「まあ! 可愛い事を言ってくれます! 実の妹みたい」


 嬉しさに顔を崩しまくるマリー。

 エリザベートも遠慮なく微笑んだ。



 アルトワ伯は横目でマリーを見ながら鶉の半熟卵を口に入れた。

 速読術……胡散臭いが出鱈目とは断じ難い。

 王が当然の様に振る舞っているのだ。

 王妃はこういった技能にのめり込む人なのか。

 これまでパリの劇場や舞踏会、賭博場などに誘ってみても王妃としての仕事ならともかく個人的には行く気はしないと断られていた。

 その割には頻繁にパリに出向いていたらしいが。

 容姿、身なり、立ち振る舞いを褒め上げても謙遜するだけで乗ってこない。

 彼的にはつまらない反応だったがしばらくして何だか暴れん坊だとか突拍子も無い噂が漏れ出た時には首を傾げた。

 この人何をしたいのか?

 そうこうしてる内王妃となり糞の王女とか呼ばれ、それでいて相変わらず明朗快活に立ち振る舞う姿は理解の外にいた。

 本来なら国の品格を揺るがす由々しき問題なのに、本人どころか夫たる国王まで容認状態なので制止役の成り手がいないと聞く。

 王室の料理を必要分だけにして余剰分をレストラン開業に利用するとなった時は驚いた。

 そんな発想無かったから。

 自分は同調する気は無かったが他の兄弟姉妹が追従したので仕方なく認めた。

 王妃の発想は基本無駄遣いを削る事なのか。

 だとしたらこれはとても都合の悪い事だった。

 デュ・バリー夫人がいなくなってから気が付いたら自分が一番の金食い虫になっていたからだ。

 

 (これ……やばくないか?)


 王妃を散財の同志に引き込む事に失敗し、むしろ倹約に舵を切るとなれば自分の立場はどうなる?

 とは言えどうするべきかを思い付く訳でもなく、二個目の卵を俯きながら口にするアルトワ伯だった。


 



 

 末の弟が悩んでますが兄弟が多いと色々なのがいますね。

 兄思いの弟はいない様ですが。

 この作品に於いてもうこの弟は見納めかもしれないのでこれ位の出番はご了承願いますw

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