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第百七十二話 全員集合





 

 四月。

 パリ中にある意味ゲリラ的に出現した報奨金授与の騒ぎがひと段落して農民に無料で肥料を渡す期間も終了した。

 今後は今年いっぱい半額で売る事になる。

 販売量が下がる可能性もあるのでしっかり管理していかねばならない。


 ところでマリーはこの一件以来、幸運の王妃とかばらまき王女とか呼ばれるようになった。

 どうもマイナスのイメージの時は王女と言う呼び方になるらしい。

 王妃とは認めていないという意味が込められているのだろうか。

 


 そして四月中ば。


 「おめでとうございます!」


 「おめでとう」


 国王夫妻に祝福され身を引き締めて直立する料理長。

 そしてここはヴェルサイユ宮殿の宮中に新たに誕生した食事処だった。

 今日開業となり祝いに王族達がお祝いに集まったのだ。

 元々マリーが毎日の食事であまりにも残り物が多く出るのを憂いて必要な分だけ出すよう提案したのが始まりだった。

 それで料理と人手が余るなら、その分を料理店を立ち上げて有効利用しようという発想だ。

 商売だから利益も見込める。

 国王と王妃が率先して行うので王の肉親も自然と必要分の料理のみ出してもらうやり方に追従していった。

 これで店を出せるだけの食材を確保できた。

 という事で今日は王の弟妹達も祝いの席に参加している。


 「ありがとうございます。やっとこうして店開きが実現しました。今朝はここで宮廷料理と変わらぬ味をお楽しみ下さい」


 跪きながら料理長は王族の面々にうやうやしく礼をした。

 そう、ここの料理店の売りは王宮料理と同じ味を楽しめる事なのだ。

 だからまず、王族に最初の客になってもらい普段食べている料理と同じであると太鼓判を押してもらう必要があった。

 すでに店の周りには貴族や平民までもが群がり護衛達に押し止められていた。

 準備は整っているのだ。


 「それでは早速お席に……どうぞ」


 促されて用意された席へと歩を進める王族の面々。

 流石に誰がどの席に座るかまでは用意できない。

 一介の料理長に王族の微妙な力関係まで推し量る術は無い。

 彼ら自身に任せるしか無いのだ。 


 王族が一同に会して食事を行うのは何らかの催しの時や、定期的に決めた日に行う時などがある。

 どちらの場合も観衆が見学する事はない。

 

 食事会に参加したのは国王夫妻。

 国王は現在二十歳。

 その一つ下の弟のプロヴァンス伯とその妻マリー・ジョゼフィーヌ。

 三つ下の弟アルトワ伯とその妻マリー・テレーズ。

 五歳下の妹クロティルド王女。

 最後に一番下の妹、現在十歳のエリザベート王女。

 この八人で食卓を囲む事になる。

 王の三人の叔母は参加しなかった。

 

 食卓はヴェルサイユで使われている物と遜色ない豪華な物だった。

 と言ってもまだ料理は運ばれていないので置かれている物はいくつかの陶磁器だけ。

 食卓は正方形で一辺に二人ずつ座る形になっていた。

 王とその親族達はそれぞれの席に向かった。。

 

 席次は北側に国王、左隣に王妃。

 東側の席にプロヴァンス伯夫妻。

 西側の席にアルトワ伯夫妻。

 南側にクロティルド、エリザベートとなる。

 

 彼らは事前にメニューを見せられ食べる料理を選んでいた。

 メニュー自体はフランスでは十八世紀後半に使われ始めたもので比較的斬新なシステムだ。

 これもマリーの意見で取り入れられたのだった。

 ただし今回は卓に付いてすぐ料理が出せるよう事前に選んでもらった形だ。


 王から順に席に着き、全員が座り終えると料理を数人のコックが運んできた。

 宮廷料理を並べる者と何人かかぶっている。

 国王夫妻から順に二回に分けて料理が運ばれていった。

 全部並べ終わると料理長が現れ国王の傍に付いた。


 「お恐れながら、今回ばかりはお毒見を」


 「ああ」


 料理の一部を取り分け毒味を行う料理長を見つめつつ王は皆に問いかけた。


 「他にも毒味を所望する者はいるか?」


 「いえ、それには及びません」


 プロヴァンス伯の返答が他の者の答えにもなった。

 毒味を終え後方へ引き下がる料理長。

 王が悠然と声を上げた。


 「では王宮レストランにおける初めての食事を行う!」





 パリオリンピックの開幕式でマリーアントワネットの首がちょん切られるパフォーマンスがあったそうですね。

 スポーツの祭典とどう関係するの?

 まあうちは史実に基づきその史実をぶっ壊すフィクションなマリーを書き続けるだけですw

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