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第百七十一話 当選発表






 翌朝……




 カリナは目覚めるとすぐに朝食の用意を開始した。

 幼い娘はまだ目覚めてない。

 今のうちに片付けておかないと。


 とんとんっ


 突然ドアを叩く音がした。

 娘が起きないかと気にしながらドアに向かった。

 戸を開ける前に声をかける。


 「どちらさんですか?」


 「カリナさんのお宅でしょうか?」


 女性の声。


 「私は今ゴミ処理関係の職務を行なっております。ぜひお目通りを」

 

 なんか怪しい。

 

 「用事は?」


 「あなた様にとても良いお知らせがございます。ですのでドアを開けて頂けますか?」


 胡散臭い。

 やけに言葉遣いが丁寧なのも。

 ここら辺では珍しくないが、このドアは古く痛みが激しく鍵も壊れて使えない。

 それでも開けるのに抵抗あるのでドアにあるひび割れた部分から覗き見た。。

 すると……

 

 僅かなドアのひび割れから見える満面の笑顔!

 驚く間も無くドアが勝手に開いていく。

 ドアノブを掴んで引っ張っているのがまるで無かったかの様に。


 開いたドアから全身で喜びを発散しているすらりとした女性が現れた!

 

 「おめでとうございます〜!!」


 賑やかな声が響く。

 何事なのか、どうなってるのか??


 「カリナさん、あなたの出したゴミ等を確認しました所、正しく適切に処理されておりました。よって……」


 えっ? これって……


 「報奨金500リーブル差し上げま〜す!!」


 「え〜〜〜??」


 カリナは驚きのあまりそのまま硬直してしまった。

 騒ぎを聞いて目を覚ました娘が母に近付き見上げる。


 「どうしたの〜?」


 「……」


 無言の母に首を傾げる娘にマリーが囁いた。


 「大丈夫ですよ。嬉し過ぎてこうなったんだから」


 「…………?」






 「落ち着きましたか? では説明します」


 部屋に入ったマリー。

 外ではカークとビスケが待機している。

 突っ立ったままの母と娘に向き合って話し出した。


 「まず500リーブルですが一括払いか毎月100リーブルずつの分割払いができます。一度に大金を持つと物騒と言う場合もありますので分割払いも使えるようにしました。分割なら役所で支払い、一括なら……今ここでお渡しします」


 「!!」


 「あ、ママ揺れてる〜」


 「あ、大丈夫ですか? どちらになさるか少し落ち着いてから決めてもいいですよ」


 「い、い、い、今ください〜」


 「はい分かりました、カークさん、金庫を」


 「はっ」


 カークから無骨そうな金庫を受け取り鍵を開ける。


 「あ、この金庫、夫が錠前作りました。内輪で済ませてます」


 ぱかっと金庫を開いて中を見せた。


 「あ、あ、」


 当然金貨が一杯。

 

 「どうぞ」


 金庫を渡したらそのまま重さで潰れてしまいそうだ。

 気を遣いながらそ〜っと渡したがやっぱり金庫を持ったまま座り込んでしまった。

 

 「ママ〜」


 気遣う娘を横に惚ける母にマリーは説明を続けた。


 「金庫の中に私が報奨金を渡した証明書が入ってます。ちゃんと私のサインがありますので。今回は特別に金庫に鍵も添えてお渡しします。大金ですので物取りにご注意を。あ、何なら信用のおける銀行の紹介も証明書に書いてありますのでご利用をお勧めします」


 そう言って鍵を座り込んだカリナの膝に置くとマリーは娘に微笑み頭を撫でた。


 「お嬢ちゃん、ママをお大事にね。それではこれで失礼します」


 「お待ちください……」

 

 そのまま立ち去ろうとするマリーをやっとの事でカリナが呼び止めた。


 「あ、あの、ありがとうございます……お、お名前は?」


 「はい。私はマリーアントワネットです」


 「…………」


 マリーは部屋を出るとカークとビスケに声をかけた。


 「はい! では行きましょう!」


 「はっ」


 「はい!」


 三人が廊下を歩き階段を降りようとした時にカリナの部屋から叫び声が聞こえた。


 「ええ〜?! マリーアントワネット〜!?」


 「ママ〜!!」


 マリーは振り向きつつ呟いた。


 「ご近所迷惑にならないでしょうか?」


 「マリー様が原因でしょう? 短時間であれだけあって気が動転しない訳ないです」


 「しょうがないですよ。マリー様」


 「そうですね。では次二等賞行きましょう!」


 こうしてマリーのパリ中を網羅したゴミ出しの報奨金授与活動が一月に渡って行われる事になったのだ。



 「結局全部私自身がやらなくてはいけませんねえ……」



 




 やっと当選者が出ました。

 全地区全員に賞金を配るとなるとマリーの労力は計り知れないです。

 それにパリにおける市民のマリーに対する印象はどうなるのでしょうか?

 はてさて……

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