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第百七十話 抽選







 こうして新しいルールによるゴミ処理がパリ中で実施された。

 もちろん何事もなくという訳にはいかず、不都合もいくつか発生した。

 肥料が売れ残った場合はこれをどうするのか? といった具合に制度の課題はいくらも噴出したのだ。

 それらも含めての制度改革だったと言えるだろう。


 そして半月の時が過ぎた……





 夕刻。

 マリーは自室で机を前にしてサイコロを握っていた。

 幅三センチ程の大きめなサイコロ。

 机には地図があった。

 ひょいとサイを放り上げ地図の上に落っことした。


 こんっころころころ……


 転がったサイが地図の一箇所に1を上にして止まった。


 「ふむ、ここですか」


 マリーはサイの止まった箇所にペンで×印を付けた。

 実はサイの目の数は全く関係なかった。


 「では行きましょうか」


 地図を持つと部屋をそそくさと退出していった。





 夜のパリ。

 人の行き来が途切れた出したフォーブール・サン・マルセル。

 ちらほらと雪が降る中、夜闇に紛れて動く複数の影。

 道沿いに進むと置いてあるゴミに目を向け立ち止まった。

 

 「ここら辺です!」


 その声に一緒に動いていた影が止まった。

 影の一人が持っていたランタンもう一人にかざした。


 「ありがとう……」


 そう言うや懐から巻き紙を取り出し広げた。

 ランタンの明かりに照らされたのは一箇所に×印の刻まれたこの地区の地図。

 

 「ここですね、ほぼ間違いなく」


 「では急いで済ませましょう」


 「ええ」


 早速ゴミの入った器を調べる。

 実際には糞尿の方が主な調査対象だ。

 

 「……名前が器に書いて有りません。残念でした、はずれです」


 「誰に言ってるんですか?」


 迷わず隣にある器を確認する。

 ちゃんと名前を書いた貼り紙が付いていた。

 蓋もしっかり閉じてある。

 

 「これは有望。扱いが丁寧です。ちょっと失礼しますね」


 さっと蓋を取って中を確認する。

 さっと蓋を閉じた。


 「せっかく臭いが漏れない様に丁寧に閉じてあるのに申し訳ないです」


 「それでどうなのです?」


 「これです! 大当たり〜!!」


 「で、では名前を書き写して退散しましょう」


 ペンを取り出し地図の裏に名を記した。

 書き終えた途端慌てふためいた声が響いた。


 「大変です〜! 夜警隊が見回りに!!」


 「何!」


 「あら」


 「どうしますか?」


 「もちろん……逃げます!」


 「ええっ!?」


 しゅたたたたっ


 「あっ待ってください〜!」


 「なんで逃げねばならないんだ〜?」


 こうして怪しい三人組は夜警隊から逃走を開始し、夜の闇に身を隠すのだった。






 抽選の方法が肉体労働すぎるしなんかいかがわしいです。

 公正な抽選するために逆にこんなやり方になるとは。

 それでもマリーは気にも留めてないのでしょう。

 やはり周りが大変……

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