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第百六十一話 投石







 「貴様ぶっ殺すぞ〜!!あ痛っ」


 「ゴミに出す入れ物ですが是非自分の名を書き入れておいて下さい。誰の物か分かる様に。字の書けない方は書ける方に頼むように。今役所でも名前を書くサービスをしています。役人の記名した紙を入れ物に貼り付けて下さい。よろしく願います」


 「やかましい! だからあ痛たたた……」


 入れ物を片手に持った為残る片手だけでトマスの手を持つマリーだが、それでもトマスは動く事ができない。

 マリーの説明より住人達はそっちの方が気になっていた。

 トマスの家族、特に子供達が心配そうに父の姿を見つめていた。


 「ああ坊や、お嬢ちゃん、大丈夫よ。お父さんにちょっと穏やかにお話を聞いてもらってるだけですから。うふふふ」

 

 「うぎゃああ!」


 私服警官達はカークに制され突っ立ったままで呆然と護衛対象を傍観していた。

 こういうマリーを初見だったのだ。

 カークはと言うとマリー任せになっている今の状態にまたも歯噛みしている。

 ビスケはマリーのトマスと繋いだ手を見て自分まで痛そうな顔をした。


 「うわー、片手で持った方が痛そう。あれ前にやった親指と人差し指の間の急所を押す奴だ……」





 「これらの事は皆様の住むこの街を綺麗にする為のものです。皆様ご協力をお願い致します」


 「いい痛いい」


 ひゅっ


 後方で風を切る音がするとマリーに向かって黒っぽい物体が飛んで来た。

 

 がしゃあんっ!


 陶器の入れ物が粉々に砕けた。

 破片が飛び散った。

 陶器にぶつかったのは石だった。

 しかも一発で陶器製の入れ物を砕く拳大の石。

 散乱した破片が地面にバラバラと落ちた。

 

  「マリー様!」


 駆けつけるカーク達だがそこにマリーの姿は無い。

 何故ならマリーは顔面目掛けて飛んできた石を陶器の入れ物をひょいと投げて盾代わりにし、石が入れ物にぶつかる前に駆け出していたから。


 


 ユルリックは観衆の最後列にいた自分の更に後ろにいる者に気付いた。

 瞬間、その者が投擲姿勢を取った。

 大きく振りかぶって投げたのは石だった。

 石の行方を目で追わずに投げた人の顔に視線がいった。

 投げたのが女性だった事に驚いたからだ。

 だがその直後に女性の隣にマリーアントワネットの笑顔が現れた事に更に驚いた。

 

 「???」


 何だか分からなくなってユルリックは思考も動きも停止してしまった。

 

 「おはようございます」


 マリーはあいさつの言葉と共に女の手を握った。

 あまりに突然な事に狼狽する女は手を振り払おうとするがまるで離れない。

 

 「是非ともお話を。こちらへおいで下さい」


 「ひっ?」


 両手で両手を掴まれ引き寄せられた。

 抗しようとしても体が下に傾きそのまま引き連れられてしまう。

 

 「ああっ離せ離せ〜!」


 「悪い様にはしませんから。言いたい事もおありでしょう」


 ユルリックは王妃に連行されて行く女を見送りつつ身を震わせていた。


 「こんなの相手にしていたのか……」




 

 少し時間軸の流れに行き来があります。

 順番通り書くのが難しくて……

 入れ物に石が当たる前にもう動き出してるというのは平成のバトル漫画などではよくあるパターンでしたね。 

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