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第百四十九話 実演と試食の効果







 「さて、皆さん。更に!」

 

 肥溜めの説明を終えたマリーは肩に下げたバッグに手を入れた。


 「肥料の一月間無料受取の他に! こちらをお付けします」


 取り出したのは。


 「これはじゃがいもと申します。ご覧を」


 マリーが取り出したジャガイモを物珍しそうに見る農夫達。

 パルマンティエやフィリップ伯爵の尽力はあったが、まだじゃがいもを知らない農民達は多かった。

 

 「寒さに強く栄養価の高い作物です。ご希望なら栽培法と種芋をお分けします」


 「ふ〜ん」


 手に乗っかったじゃがいもを囲むように覗き込む農民達。

 

 「試しに畑の片隅にでもちょこっと植えて頂ければ嬉しいです」


 にっこりと農民達に笑顔を振りまくマリー。

 農夫達もマリーの話芸に乗せられて興味の表情を浮かべている。


 「さて、皆様! 今回限り特別に! 皆様方だけに調理されたじゃがいもをご試食頂きます」


 バッグから木箱を取り出すとぱかっと蓋を開く。

 そこには四つ切りにされた茹でじゃがいもが箱いっぱいに敷き詰められていた。


 おお〜?


 「お食べ下さい。塩茹でで素朴に味付けしました」


 マリーは手で取り分け農民達に渡し出した。

 おっかなびっくり口に入れると……


 「お……うめえ!!」


 「うめえ!、 でしょう!?」


 「うめえ!」


 「でしょう!」


 「お〜何だこれ」


 「じゃがいもです!」


 

 ほどほどの距離で見ているカークが眉を顰めていた。


 (またか……)


 もうだいぶ予定を過ぎている。

 

 「じゃがいもを持って来てたなんて聞いてなかったぞ……」


 これで食べ終わるまで止めるきっかけは無いだろう。

 バジーが相槌を打った。


 「それにしてもあの農民を引き込む腕は何だ。実演して見せてそんでもって試しに食わせて売り込むって凄え商才持ってるな」


 「生粋の王族なんだが……」


 「やっぱり熱意だと思います」


 そう言うビスケの言葉にはどちらかというと感動感銘の気持ちが含まれてるみたいだった。

 それぞれの受け止め方はどうであれ……


 「今日は遅くなりそうだな……」






やっと説明及び試食が終わり農民達からマリー達は立ち去る事になった。

 農民達の中にはもうマリーと名残を惜しむ者まで出来上がっていた。


 「お時間を取らせて頂きました。それではこれで失礼致します」


 「おおう、そうだ。あんたの名前聞いてなかったなあ。何ちゅうんだ?」


 「ああ、私はマリーアントワネットと申します。以後お見知り置きを」


 「あ〜そうかあ。ちょっと長いなあ」


 「そうですか。ではマリーでいいですよ」


 「ああ、マリーな。うん? マリーアントワネット……?」


 「はい。では、またお会いしましょう」


 「マリーアントワネットおお??」


 マリーはどよめく農民達に背を向け歩いて行く。

 

 「あんた本当に王妃さんか? ちょっと待ってくんろ!」


 「はい?」


 振り向くマリーに群がらんとする農民達。


 「いかん!」


 カークがすっ飛んできてマリーを抱えると走り去った。


 (また農民達と話し出すと取り留めが無くなってしまう!)


 「カークさん?」


 「マリー様、次行きましょう、次」





 

 

 実演と試食。

 今の世で広く使われている商法です。

 マリーはかなり才能がある様ですね。

 まあ通販番組とか元ネタに使ってるからそれも当然かw

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