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第百四十四話 錠前作り




 



 国王ルイ十六世は錠前作りに傾倒していた。

 と言ってもまだ二十歳であり、技能を磨きあげる程の経験値はなかった。

 しかし錠前職人とのつてが有り、手伝って貰えば錠前は作れるはずだった。

 

 「そうでしたか。錠前にご興味があるとは知っていましたがそこまでの腕とは」


 「いや、人に見せる程のものではないからあまり目立たぬ様にしていただけだ」


 マリーは夫を見る瞳に期待感が浮かべている。

 錠前作りに興味が惹かれたからだ。

 しかも夫が作ってくれると言う。

 これはもしかしたら何か広がりそう……


 「そこで呼びたい人がいる」


 「呼びたい人……?」


 



 「紹介しよう。錠前屋であり、私の錠前作りに助言をしてもらっているフランソワ・トーマンだ」


 「お初にお目にかかります。王妃様」


 うやうやしく一礼するトーマン。

 

 「初めまして。お会い出来て嬉しいです。トーマンさん」


 にっこり笑うマリーに恐縮するトーマン。

 

 「早速ですがこれをご覧ください」


 取り出した図面。

 マリーが広げた紙に目を通すトーマン。


 「これは……箱ですか」


 「はい。この箱の錠前を作るのですが、国王様がお作りになると仰せになられて……ご助力をお願いできますか?」


 「はっ光栄でございます!」


 「それから箱を作る人も必要です。お心当たりはありますか?」


 「はい、それはもちろん! ドアや箱がなければ錠前だけでは役に立ちませんので。そういった業者や職人も知っております」


 「それは良かった。見栄えより頑丈さを優先させるつもりです」


 ここでマリーはこの箱の用途を説明した。

 トーマンは目を丸くして話を聞いていた。


 「何と……そんな事にお使いとは」


 「箱の設置場所はヴェルサイユ宮殿前を予定しております。雨風に耐えられる様にお願いします」


 「はっ……」


 こうして箱と錠前の製作が始まった。

 




 錠前作りは王の厨房の上の屋根裏部屋で行われた。

 トーマンの助力の元、王の錠前の製造は進んでいった。

 マリーは部屋への入室を少々だけなら許された。

 少ない時間で見せられたのは鍛冶屋の様に金槌を振るって錠前を作成する夫の姿だった。

 すぐ時間が来て部屋を出たマリーは夫が仕事を終えて出てくるのを待つ事にした。

 金槌の音が間断無く響いていた。

 やがて槌の音が止みしばらくして夫とトーマンが部屋を出てきた。


 「お勤めご苦労様でした」


 頭を下げるマリーに王は困った顔を見せた。

 

 「その様なつもりではないのだが……ああ、トーマン、お勤めご苦労だった。今日はこれで帰って良いよ」


 「ははっ、では国王様王妃様、これにて失礼致します」


 そそくさとトーマンは出て行った。


 「マリー、もうすぐ錠前は完成するぞ」


 「本当ですか!? それは待ち遠しいです」


 「君にしてやれる事などこれ位しか無いからな」


 「えっ?」


 「それでは夕食にしよう」


 「あっ、はい……」


 マリーは王に続いて部屋を後にした。


 (それにしてもあの言葉は…………)


 何か心が軋みを覚えた。

 



 


 マリーのために夫である国王が錠前を作ります。

 この様なことをしてもらうのは初めてでは?

 二人の関係に影響するのでしょうか。

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