第百三十六話 議題その1の行方
国王は即答した。
「二人とも何をやっているんだ?」
「えっ……」
ふと自分を振り見ると……
二人は目と鼻の先で向かい合って突っ立っていた。
「まず席に戻りなさい」
「ああ〜、失礼しました!」
「ごめんなさいませ、国王様」
モルパは席に座りマリーは王の隣の席に戻った。
さっきまで二人の様子を伺っていた王はまるで舞台劇を見ているような気になっていた。
筋書きは出鱈目だが気合いが入ってると言った風な。
そして場の空気感が普段と違う。
国王は意を決した、と言う雰囲気で立ち上がった。
「議長。発言していいか?」
言われてモプーは直立不動となった。
よく考えればモルパと王妃を分けるのは自分の仕事だった。
それを王にしてもらったんだから、もう何も言えない。
「はっ! 存分にご発言を!」
「え〜……高等法院の再開は…………」
皆の注目が一気に国王に集まる。
「やめとこう」
おおおおお……!
会議場中に大きなどよめきが響いた。
「な、何ですとお!?」
モルパが大声を叫んだ。
声に悲壮感すらこもっていた。
国王には多くの貴族達から常日頃プレッシャーを与え続けていたのに。
会議室でも高等法院の再開を切に臨む者の声を蔓延させ雰囲気作りもしていたのに。
どうしよう、決議を急ぎすぎたか? いや随分長くやってるぞ、前回並に体力使ってるし。
モルパは王に懇願する様に叫んだ。
「どうしてです!? どう考えても多くの者が再開に賛同していると思います!」
「いや……今まで高等法院を再開願うと随分の貴族に何度も言われ続けてきた。私としてはその力を偏った方向に使われはしないかと危惧していたので賛同できなかった。しかし貴族の嘆願は止まらず悩み続けていた。それで今回の会議でどうすべきかと思っていたのだが……貴公と王妃のやり取りを見ていたら…………それ程悩む事もないという気になった」
な、何だって〜〜!!
「まるで喜劇を見ているみたいだった。愉快とまでは言わないが。まあ当人は真面目だったのだろうが」
喜劇い〜?!
「まあ、そんな風に見てらしたの? お恥ずかしい……」
王の横で王妃が恥ずかしそうに頬を染めていた。
「あれで気が楽になった。自分の意思を言う事ができた。最早議題を持ち越す必要も無い」
「…………」
モルパは座席の上で一気に萎んでいった……
結局前回同様体力を消耗した挙句目的は頓挫したのだ。
「え……それでは議題の高等法院再開については……国王の命により…………否決となりました」
モプー議長がおずおずと宣言した」
おおおおう……
淀んだ歓声が会議室に伝わった。
これで本当に結論が出たのだ。
「え〜、これで朝の部は終わりと致します。午後からの会議は二時からとなります。それまでの間休憩としますので一旦解散願います……」
モプーは休憩宣言を行った。
(まだ半分に満たないのか……)
高等法院はまた否決。
随分かき乱した結果でしたがマリー本人はどこまで自覚してるのでしょうか。
議会の決定も空気が大事……だったらいいのかどうか分かんないです。