第百三十三話 高等法院と民
「別に私三部会復活させなくていいです!」
え え え え え え~!?
会議室内の誰もが声を失ってしまった。
にも関わらず騒然とした空気に包まれている。
モルパも口あんぐりだ。
(三部会を……いらないと?! こっちは高等法院復活に利用するつもりだったんだぞ!)
数俊の沈黙の後マリーは言葉を続けた。
「そもそも私は民の意見を聞きそれを政治に反映させる機構が見当たらないのに心を痛めていました。これは政治機構の欠陥であり解決せねばならない課題です。三部会はそれぞれ僧侶、貴族、平民の身分で執り行われるものです。他に民の為の機構が思いつかないから口に出したのですが、最適とは思っていません。まして三部会だと僧侶と貴族の機構が新たに増えてしまします。更に高等法院も加えるとなると民の機構一つ作るのに貴族の機構をどれだけ増やすのかとなってしまいます」
出席者の多くがマリーの熱弁に呆気に取られている。
マリーが民のための王妃だと自称しているのは知っている。
しかしそれでも貴族の大部分には賛同しかねるものだった。
「私は既存の組織、機構ではない民の為の機構を考え、作り出したいと思います。時間はかかりましょうが王妃の使命と思っております。貴族王族に偏った政治ではこの国の未来は見えては来ないと私は実感しています」
一旦言葉を切ったマリーに対して誰も何も言わない。
話があまりにぶっ飛んでいたからだ。
これから自分で民の為の機構を作る?
なんで民の為なんだ……王族なのに。
(これはどう収拾を付ける気だ?着地点はどうなる?)
テュルゴーはマリーの意図を測りかねていた。
味方をする気ではあったがこれはどうしようか。
(もう無茶苦茶だ……相手をせずに粛々と高等法院の再開を進めるしかない)
モルパは考えを切り替える事にした。
王妃と張り合っても仕方ないだろう。
「この国の国民の大部分は平民です。彼ら無しには国は立ち行きません。もう少し民を大事にして頂きたいのです。貴族王族が贅沢できるのも民の納めた税金があってこそです。それを心の片隅に常に置いて下さればと願います」
「それと高等法院は別の話では?」
モルパが反論に出た。
「民の事はもうよろしいからまず高等法院の再開について結論を出してはどうでしょうか?」
「民の事はもうよろしい……?」
マリーの目が鋭く光った。
ぎろりっ
その視線にモルパが射抜かれる。
ぞくっ
何だこの眼力?!
「民とは国民です!! 国民の事はもうよろしいのが高等法院ですか!?」
「うっ」
モルパは立ちすくんでしまった。
言葉を選び損なったか。
そこを王妃に付け込まれる羽目に……にしても眼力が……
数瞬の間が空いた後マリーは息をついた。
「少し落ち着きましょう」
お前が言うか〜!
そりゃこっちにすればクールダウンしてくれる方がいいかもしれないが。
自分の言った通り少し落ち着いた声でマリーが話を続ける。
「そもそも高等法院って何でしょうか?」
そこからか〜!!
何だかマリーが暴走気味です。
もう少し戦略的でもいいんじゃないのと思いますが、暴走を戦略としていた前のアメリカ大統領もいましたね。
どうも政治の話を書いてると後書きも政治の話になってしまって弱ります。
参考にするネタをそこから探すのだからしゃーないけど。