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第百三十二話 御用達





 

 「他にご意見を述べたい方は……」


 モプーの声にすぐに反応したのは……




 ……誰だっけ?


 皆が見覚えの無い顔に首をひねる。

 

 「私はモルパ様の補佐を務めておりますユルリックと申します。私の考えをぜひお聞き下さい」


 名乗られてもピンと来ない。

 モプーはモルパに問いかけるように目を向けた。

 モルパは頷いてみせた。


 「彼は最近私の補佐役に就いてもらった男だ。会議の参加許可も取ってある。怪しい者では無いのでご安心を」


 「そうですか。それではご発言を」


 「はっそれでは。高等法院の必要性は言うまでもありませんが……」


 ユルリックの話はやはり先の二人とさほど変わり映えの無いものだった。

 高等法院が国益に適う物であり貴族階級の多くはそれを望んでいる。

 この高等法院が無い今の状態がいかに不健全であるか、など。

 具体的に突っ込んだ内容はあまり無いが今ここにいる貴族達の多くが好意的な目で見ているようだ。

 

 テュルゴーは発言中の男からモルパに視線を移した。


 (前回と違い何人かに負担を分担させたのか。しかも多くの人が意を同じくしていると訴えかけられる。そのために御用達の者を集めておいたのか)


 こうなると王妃は劣勢になるかも。

 それはテュルゴーにも不都合ではあるが。

 しかし発言力の弱い無名の者に言わせるのは何故だ?

 いぶかりながらユルリックに振り返る。

 

 「更に申し上げたい事は以前会議にも出た三部会との兼ね合いです」


 「何!」


 場の空気が一変した!

 さっきまで都合のいい事しか言ってなかったのに急にどうした?


 「あくまで私個人の意見ですが、高等法院を再開させるとおっしゃるのなら三部会の事も考えてみるのも良いかと存じます」


 会議室がざわめき出した。

 これは予想外の発言だ。


 モルパは問題発言のユルリックを俯き加減で見ていた。

 口元に笑みが浮かぶ。


 (これでいい。三部会を餌に高等法院の再開を実現させる。そうなればこっちのものだ。元々何処の馬の骨とも分からぬ男の発言だ。こいつの発言は後で失言として自ら引っ込めさせる。そして私の補佐役を解任させる。そういう約束で大金払って雇ったのだからな。次の会議の時には奴の姿も無ければ発言も無い事になっているのだ。王妃の三部会を引き合いに高等法院の再開阻止する手を逆手に取ってやる!)


 「……以上が私の意見です」


 ユルリックは席につくとやり切った感を出してため息ついた。


 「……え〜、それでは他のご意見を……」


 もうここまで来たらこの人しかないだろう。


 今まで悠然と様子を見続けていたマリーが手を挙げた。


 「議長。王妃の立場から発言させて頂いてよろしいでしょうか?」


 「はっ、……そ、それでは王妃様に一言お願い致します」


 立ち上がったマリーに全員の視線が集まる。

 緊迫感が会議室を包み込んでいった。

 

 マリーが口を開いた。


 「高等法院再開の代わりに三部会もとおっしゃる意見がありましたが……」


 「…………」


 「別に私三部会復活させなくていいです!」



 え え え え え え〜!?

 

 



 

 自分らの法案を通すため御用達の職者を集めて都合の良い意見を喋らせるってのは我が国の官僚がよくやる手ですね。

 増税の時の定番です。

 ちょこっとだけ反対意見を混ぜて公平を装うという。

 でもそんな今の時代に使われてるパターンパクって使ったらマリーに勝ち目ないかと思うのでどうしましょうか?

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