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第百二十九話 会議を前に





 モンルージュ地区オルレアン街道における大陥没事故は死人こそ出なかったが国務会議の議題になるには十分だった。

 だが以前から持ち越された議題もあり、その消化にはそれなりの手間がかかりそうだった。

 マリーは地下迷宮で受けた負傷を気にする間も無く国務会議に臨もうとしていた。

 事情を知るカーク達の心配を一笑に伏し、逆にカークの火傷を気遣う程だった。

 実際マリーの回復力は目を見張る物があり、肩などに受けた軽い火傷は跡形も無く治癒していた。

 髪は焼け焦げて失った部分を切り揃え、腰まであったのを肩甲骨の下辺りまでにした。

 自分と夫が気にしてないので一切問題なしとマリーは言い切ってのけた。

 

 パリのゴミ処理のシステムと試算はできている。

 どれだけ実効性があるかは議題を通してから試すしかない。

 ただ議題を通すには予算の容認が必要だ。

 そして高等法院は復活させたくない。

 いたずらに貴族の力を増大させ、その中の一部の者に乱用を許すのは望まない。


 国務会議は朝食など朝のお勤めの後行われる事になった。

 前回会議が時間切れになったのを踏まえての事だった。

 当然時間切れで持ち越した議題、つまり高等法院の復活から議論されるはずだった。


 モルパは前回の時間切れの二の轍を踏まない様に準備していた。

 あの時の体力の消耗は忘れない。

 一人で王妃と言い合ったせいで七十四の老体は限界寸前だった。

 今回はそうは行かない。

 策は練ってある。


 一方マリーは……

 

 「やっぱりモルパ様は体力を温存する手に出るでしょうね……」


 マリーは小さく呟いた。


 「うん、何だべ?」


 問いかけの声にマリーは苦笑する。


 「すみません、つい独り言を……」


 ここは国王の食卓だった。

 今朝はマリーも王と食卓を囲んで食事を取っていた。

 いつもの様に大食漢の王より早く食事を済ませたマリーは見物する聴衆と井戸端会議をしていたのだ。

 

 「実は食後に国務会議がありまして」


 「こくむかいぎ?」


 「そう、国の政を会議する大事な仕事です。しかし国家の重要な会議ですので、さすがに中身を皆さんにお伝えする事はできませんので予めご了承下さい」


 「はあ、そうですか」


 事情を飲み込めない平民の男に代わって貴族の男が前に出た。

 

 「マリー様、これも議題にされるのですか?」


 言いながら彼は新聞を差し出した。

 

 「毎度ご苦労様です」


 いつもの様に礼を言うと新聞を受け取り誌面を開き見た。


 「オルレアン街道の陥没事故の記事ですか。だいぶ日が経つのにまだ紙面に載るのが事故の深刻さを物語ってますね。この事故以前にも地滑りの事故があったそうですし、局地的と言うより地下迷宮全体の問題として取り組まねばいけませんね」


 「地下迷宮、ですか」


 「別に不安を煽るつもりはありませんよ、この呼び方は」


 当人はむしろわくわくしていたとは言えない。

 

 「議題が多いので一つ一つ片付けるしか無いのですが……」


 他の記事を見ると。

 

 「おや、私の記事が小さいですね。陥没事故の記事がだんだん小さくなっているのに。この新聞、趣旨変えでもしたのでしょうか?」


 どんな趣旨だ。


 「ありがとうございます」


 新聞を返す。

 相変わらず読むのが早い。

 感想を述べて間を取っていなければ彼女の異常な読書速度が知られていただろう。

 

 「…………」


 再びマリーは考え込んでしまった。

 怪訝そうな顔の観衆達。


 「う〜ん……」


 高等法院復活派はその理由を強く多方面に渡って主張するだろう。

 こちらは民の為の機構を持ちたい。

 それは三部会という形とは言い切れるものでは無い。

 ではどうすれば……


 「王妃様?」


 「あっ」


 観衆の一人がマリーを覗き込んでいた。

 護衛の兵士がいるのにここまでできるのだからセキュリティーゆるゆるだ。


 「失礼、また考え事を……」


 観衆から見れば今のマリーは普段とはらしからぬ様子だった。

 それが分かるのは常連が多いからでもあるが。


 マリーは覗き込んだ男と顔を見合わせた。


 「あれ?」


 これって……


 自分が望む民の為の仕組みって……


 「今やってるこれ……?」


 



 国務会議の日が来ました。

 しかし具体的な議会の政争なんてどんなものか良く分からないです。

 今の日本の政治でも見て参考にしようかしら。

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