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第百二十七話 地上へ






 とその時天井あたりで音がした。


 ぱさぱさぱさっ


 ちゅぴっ


 それまで忘れられていたツバメコが部屋の天井で皆を見下ろしていた。

 ゆっくり降下してラースの肩にとまった。

 

 「おや、あんた生きてたのかい……」


 「あなたの鳥だったの?」


 ビスケの問いにラースは答える。


 「この地下坑道から出られなくなって冬が来ちまった不憫な燕さ。ここは地上より温度が高いからもしかしたら越冬できるかと思って餌付けはしてみたんだけど最近姿を見なくてね。もうだめかと思ってた……」

 

 「そうだったの……」


 「良ければあんたにあげるよ」


 「え?」


 「あたしはもうこんなだ。罪人だよ。だからあんたが世話したいならいいよ」


 「……わかった! で、この子の名は?」


 「無いよ、そんなの。この地下に燕は一匹。区別する名もいらない。好きにつけな」


 「そう、ではツバメコです」


 「?? 、何だそれ」


 「まあいいじゃないですか」


 ビスケは笑ってラースの肩からツバメコを包む様に取った。


 「あなたは動物が好きなんですか?」


 ビスケの問いにラースは少し逡巡して答えた。


 「ああ……飼うのは好きだ。鞭で調教するのも好きだけどね」


 「そ、そうですか」


 予想とちょっと答えが違った。


 マリーが号令をかけた。


 「では! 地上へ帰ります。ラースさん、道案内願います」


 「人使い荒いね。嫌と言える立場じゃないが」


 「ほら、お前達、立て!」


 カークがラースの手下達を促した。

 今更彼らも抵抗する意思はない。

 犬は気絶して動けないものはラースの部下に担がせた。

 蛇は…………マリーが両脇に抱えて持ち運んだ。

 元々火などの刺激を与えねば冬眠状態に入っているはずのものだ。

 地上の土のある場所で好きなだけ眠らせてあげたい、とのマリーの希望だった。

 マリーの小脇に抱かれつつ蛇達は一期節分の眠りについた。


 こうしてマリー達は地下迷宮から無事に地上に帰還したのだった。





 地上はもう夜だった。

 多くの人間が落盤事故の処理で居残っていた。

 マリー達はまず警察署員と接触する事にした。

 マーク署長も事態に当たっていたので呼んでもらい事情を話してラース達の事を上手く取り計らうよう頼んだ。

 マークはマリーの状態を大いに気にしたがマリー自身は元気であるとアピールした。


 一番大きな怪我をしたのはカークだった。

 足に負った火傷は一生残るだろう。

 しかし医師による手当の末、今後マリーの護衛に支障をきたす程の物ではないと診断された。

 ならばこの火傷は戦士にとっての勲章になるとカークは気遣う主に笑って見せた。


 犬達はフィリップ伯爵に任せる事にした。

 彼は崩落事故の後、マリーの姿を探しまくっていた。

 マリーが見つかり無事だったと知り例によって大袈裟に喜び二つ返事で犬達を引き取った。

 しかしさすがに蛇には二の足を踏んだ。

 マリーの助言で気の根っこに穴を掘りそこに入れるように部下に命じた。



 会議の時一緒だった人達は全員無事だった。

 今回の陥没事故はあれだけの大事故であったにも関わらず奇跡的に一人の死者も出さなかったと記録されている。

 しかしこの事故の陰でマリー達がどのように関わり地下迷宮で何をしでかしたかは記録に残されてはいない。





 

 やっと地上に戻りました。

 地下迷宮編やっと終わり……

 ではなく後日談があります。

 蛇足になりませんように。

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