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第百十三話 遭遇






 通路を淡々と進んで行く四人と一羽。

 ここまでは順調だが。

 

 「この先に部屋があるはずだ」


 そこを通り抜ければ階段にたどり着くはずだった。

 部屋にもし人がいたら、という事も考えねばならない。

 最新の注意をはらって進み中の様子を窺わねば。

 部屋の入り口のある場所の手前数メートルの所でカークはランタンの明かりを床から少しづつ上方に上げていく。

 そこには……


 「ドアだ!」


 さっきの部屋には無かったドアがあった。

 

 「これは……中に人がいるのか?」


 ドアがあるだけでいかにもいそうな雰囲気がある。


 カークはそっとドアに近付き耳を当てた。

 特に物音は聞こえない。


 「静かだ。しかし……」


 「開けてみないと分かりませんね」


 マリーが声をひそめて囁く。


 「ビスケさんツバメコをバジーさんに」


 「……はい」


 「では、カークさん」


 「はっ……せーの!」


 がたっ


 開け放たれたドアの向こうから明かりが漏れ出た。

 部屋には木製の机に腰掛けた四人の男。

 全員黒ずくめのローブをまとっている。

 フードを被っている者が二人。

 いかにも怪しい雰囲気のいで立ちだった。

 手にはトランプのカードを持っている。

 彼らは一斉に振り向いた。

 しかし突然の訪問者に驚き戸惑っている。


 「だ、誰だ! おめえら?!」


 カードを持ったまま男の一人が叫んだ。


 「まさか……」


 男は目をぎろりとさせた。


 「入信希望か?」


 えっ 、入信希望……!


 「い、いやそんな話は聞いてねえ! てめえら何者だ?」


 「私はマリーアントワネットです」


 「あ、マリー様、前出ちゃだめです!」


 「何言ってんだお前ら? 暴れん坊王女がこんなとこに来るかよ!」


 「来たくて来たのではありません。オルレアン街道が陥没してしまい、巻き込まれて地下に閉じ込められてしまいました。それでここまでたどり着いたのがたまたま私ことマリーアントワネットだっただけです」


 「……えっ? 何……」


 また驚き戸惑ってしまった。

 理解が追いつかないのだろう。


 「な…………何〜!!」


 「何、が多いですね。陥没して閉じ込められたのがわ、た、し」


 「そ、それじゃさっきの音は……」


 「音がしてもトランプを? 何と賭博というものは……」


 「う、う、うるせい!!」


 ここでやっと男はトランプの札を落として身構えた。

 

 遅すぎた。


 男の眼前まで迫ったマリーが下から顎をおでこでごんっとかち上げた。

 男は後ろに倒れていく。

 狼狽えながら残る三人の男も身構える。

 

 カークが木槌を持って前進する。

 

 右端の男が短剣を、真ん中の頭ひとつ背の高い男が拳を、そして左端の顎髭を伸ばした男が……


 マリーが迷わず顎髭の男へ突進した。

 そんなマリーの行動にカークが歯噛みする、が、次の瞬間顎髭男が取り出したのは……


 (拳銃!!)


 と思った時にはマリーは顎髭男の射程距離の内側に入っていた。

 否応無しにマリー拳銃を向けねばならなくなった顎髭男だがその直前に銃の砲身をつかまれた。


 「!!」


 掴まれた銃の砲身が顎髭男の喉元に向けられた。

 目を剥いた顎髭男は次の瞬間銃をあっさり手放した。

 マリーも銃を手放した。

 顎髭男の右手が腰に回る。

 右手が掴んだ物はまたもや拳銃だった。

 ホルスターから銃を抜こうとした時、顎髭男の視界が真っ暗になった。

 マリーが背後に周りながら左手で目を隠したのだ。

 狼狽える間も与えず顎髭男の銃を持つ右手を取りねじり上げた。


 「うあああっ!」



 真ん中の背の高い男にカークの木槌が振り回された。

 それだけで後ろにのけ反り尻餅をついてしまった。


 右端の短剣男が構えた瞬間、彼の肩口をナイフがかすめていった。


 「ひっ」


 どすっ


 壁にかかっていたダーツの的の真ん中にナイフが突き刺さった。


 「次は当てるわよ!」


 探検を持つ手がだらりと下がった。


 「これで終いですかね」


 そう言うとマリーは床にうつ伏せにした顎髭男の銃を奪って部屋の隅に投げ捨てた。

 

 「待ちな!」


 さっきマリーに顎に頭突きを受けて倒れた男が起き上がってきた。

 顎髭男が最初に落とした銃を持って。

 しかも銃口は唯一戦闘に参加してないバジーに向いていた。


 「うっ」


 声を漏らすバジー。

 この男は倒れながらも戦いの様子を見ていたのだ。

 そして最弱が誰かを見抜いた。


 「動けば撃つぞ!」


 「撃てば命の保証はできません」


 マリーが事も無げに言った。

 これにはバジーが狼狽えた。

 

 「マ、マリー様?」


 「一発しか撃てません。その事もお考えを」


 この時代の銃は連射ができない。

 

 「う……この」


 他の三人が立ち上がり銃を構える男の元に集まった。

 

 銃を構えたまま男は開け放たれたままのドアから退散していく。

 他の三人も後に続いた。


 逃げ際に銃の男が一言叫んだ。


 「お前達には悪魔の祟りがあるだろう」


 だだだだだっ……


 男達は通路の闇に消えて行った。






 ダンジョン内で初の格闘がありました。

 これで終わりそうにはありません。

 果たして地下迷宮らしいバトルがあるのでしょうか?

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