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第百九話 地下迷宮






 「パリ全体に広がる地下迷宮の一部です」



 一旦言葉を切るとバジーはタバコの僅かな灯りで皆の顔色を伺った。

 地下迷宮と言われてカークもビスケも困惑の色を隠せないといった面持ちだ。

 そして。

 

 「地下迷宮!? それは何ですか!!」


 マリーがバジーに飛び掛かる様にして問い掛けた。

 しかも何だか目が輝いている様な……


 「だ、だから説明しますって! このパリは大昔千年近く前から採掘が行われていたんでさ。石を切り出して建物を建てたりする為に使う。これをずっと繰り返して来たんでさ。そしてその結果とんでもない事になった……」



 バジーの話は更に続いていった……





 採掘による地下坑道は歴史を重ねる毎に、止まる事無く網の目の様に広く深く掘られていった。

 一体どの様に地下に伸びているのかさえ分からず、まさにシロアリの巣に例えられる状態だった。

 やがてそれはパリ市民の都市伝説となり、魔物が棲むなどと言った噂まで流れていた。

 十八世紀の半ばに入ると道路の陥没事故が目立ち始めた。

 庶民の不安が大きくなり1772年、セーヌ川左岸の地下採掘場が調査され地図が作成された。

 その結果パリ市民は戦慄した。

 公表された実情は都市伝説として広まった地下迷宮の噂とほぼ遜色無い物だったからだ。

 パリの街は地下を縦横無尽に通る地下坑道の薄皮一枚の上に成り立っている。

 全部がそうでは無いにしろ、いつどこで薄皮が破れるかの恐怖を市民は味わねばならないのだ。


 そして1774年、十二月十七日、遂にその恐怖が現実の物になった。

 モンルージュ地区のオルレアン街道が長さ三百メートル、深さ二十五メートル地下二階に渡る大陥没を発生させたのだ。





 「……と言う訳で正に地下の迷宮と言って良いのがこの坑道なんでさ」


 タバコの火が二本目になった。


 「良く分かりました。ご説明ありがとうございました。それでです。これからどうするかですが……」


 マリーの言葉を遮る様にカークが叫ぶ。


 「ここで助けを待つべきです! 下手に動けば迷う恐れが……」


 「助けはいつ来るのですか?」


 「そ、それは……」


 「待ってる間ここを根城に通路の様子を見ましょう。まだ採掘中の坑道なら人がいて道案内してもらえるかも」


 「しかし掘り尽くして放棄された坑道なら無駄足です」


 「確かめるしか無いでしょう。それに……」


 マリーは明かりを中心に突き合わせた顔の輪から外れた。


 「ここは空気が澱んできましたし」


 「あ! すいません、タバコの煙が!」


 「いえ、これは仕方ないですね。ただ一つ所にいてむせている位なら移動した方が良いでしょう。タバコにも限りが有りますし早い方が」


 マリーは立ち上がった。

 

 「まずこっちへ行きましょう」


 通路を真っ直ぐ歩き出すマリー。


 「あ、お待ち下さい!」


 「明かり、明かり!」


 マリーを先頭にわらわらと三人とタバコの明かりがついて行った。






 という事で地下迷宮編が始まりました。

 地下迷宮には一体何が潜むのか?

 って史実に則っております。

 ファンタジー系ではないですよw

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