第百六話 ゴミ会議2
「もちろん最初の内は業者や農家に対し国が助成を行う必要があるでしょう。採算が取れるまでは当然そういう処置を行います。受け入れ先の農村に肥溜めを作らせ適切に使うよう指導する事も考えています。すでにフィリップ伯爵の領地の畑に肥溜めを作ってもらっています。ここに来る前に立ち寄り拝見させて頂きました」
いくつかある彼の領地の畑はこのモンルージュの南にもあった。
会議の場所がここになったのはその為でもあった。
「どうにしろ市民、業者、農民の意識を変えねば実現できません。ですのでご協力をぜひお願いします」
「どうやって変えるんだい?」
「もちろん一朝一夕には実現しないでしょう。しかし時間がかかっても必ず行います。私はこの制度を確立するには三年はかかると思ってます。たとえどれだけかかっても……」
マリーの言葉に力がこもる。
「たとえあなた方がどう言おうとも私はこの制度を実行します! パリを美しい街にするために!!」
マリーの勢いに全員何も言えなかった。
彼女の本気が伝わってきたのだ。
王妃を止める事は誰にも出来はしないだろう。
「王妃様、試算は?」
沈黙の中一人声が上がる。
テュルゴーだった。
「大体の所まで詰めてはいますが具体的金額までは……」
「では私が試算しましょう」
マリーの表情が驚きの色を見せる。
自分から言ってくれるとは思っていなかったからだ。
「テュルゴー様……」
「やってみましょう、テレー師、いいですね」
「ああ」
「……ありがとうございます!」
「いいだろう、乗った!」
カジェ。
「マリー様の夢が私の夢を叶えてくれる! だからお力になりますぞ!!」
パルマンティエ。
「王妃様の仰るままにいたします!!何が何でも!!」
フィリップ伯爵。
「警察署長の立場から恩義に報いさせて頂きます!」
マーク署長。
「我々も及ばずながらお力添えしたく存じます」
「やります!」
「まあそうなるわな」
カーク、ビスケ、バジー。
「……皆様方…………感謝この上ありません!!」
顔をくしゃくしゃにしてマリーは涙をこぼした。
自分の周りにこれだけの人が寄り添い力を貸してくれるのだから。
「これからも民の為に全力を尽くします!!』
その後は食事会となり賑やかな時を皆と共にマリーは過ごしたのだった。
「これで後は国務会議で議題を提出し通すだけですね」
陽が傾きかけた頃、カフェを出たマリー達は帰路につく事になった。
カークは随分前に、ビスケはマリーの部下になって程なくヴェルサイユに引っ越していたのでパリ住まいはバジーだけだった。
「俺は政治には口出しできやせんが頑張って下せえ」
「ええ、ありがとう。それではこれで……」
「いや、もう少し付いてきますぜ。市門まで見送りさせて頂きやす」
「お気遣いありがとう」
次の国務会議は大変だろう。
前の議題も残っているのだから。
それでも自分のやるべき事は変わらない。
必ず実現させて見せる!
決意も固いマリーだったが……
この直後予想もしない恐るべき事態が引き起こされる事をまだ誰も知らない。
予想もしない恐るべき事態と言ってしまった。
国務会議どうなるんや〜という事ですね。
先は長いなあ。