第百四話 残された課題
「とは言え三部会の復活は道のりはまだ長いかと感じました。足りない部分をなんとかしないと」
「足りない部分?」
「民との信頼無くして民の議会の立ち上げなど現実的ではありません。私が勝手に望んでもそれは民の意思ではないです。民の方から声が出なければ。なのに三部会の復活を叫んでいた。確かに時間稼ぎに利用してたと言われても言い返せません」
「……」
「民の為の議会とは果たして三部会の形で良いのかも合わせて考えねばなりませんね」
「そこまでお考えですか」
「でも複雑な事を考えている訳ではありません。民の為に何ができるかを考えているだけです」
マリーは夫に振り返った。
「また勝手してしまいましたね。ごめんなさい」
「……いや、君の策に乗ったのは私だ」
会議前に三部会の話を高等法院に合わせて発言すると夫には伝えておいた。
理解を示してくれたのには感謝この上無かった。
だが夫も時間稼ぎの策と思っていたようだ。
「それにしても……」
テュルゴーは更に声を顰めた。
「モルパ殿を完全に敵に回したようですな」
「あ、そうですか?」
自覚が無いのか。
まあ自分とテレーの口喧嘩を喜んで見ている人だ。
「次の会議はどうなりましょう……」
テュルゴーの問いかけは誰とは無しにと言った感じだったがマリーは即座に反応した。
「それなら今度こそ肥料の扱いを真っ先に議題に」
「持ち越しになった高等法院の前にですか?」
「できれば」
「困難ですね、持ち越した物を先にするのが普通です」
「そうですか。でも準備はしておきます」
「分かりました。それでは私はこれで……国王様王妃様、失礼致します」
一礼して立ち去るテュルゴーを二人は見送った。
自室に戻る途中、廊下を歩きながらマリーは夫に問いかけた。
「あなた、お聞きしたい事があります」
「? 、なんだね」
「民の為ばかりに心血を注いでいる私をどうお思いでいらっしゃいます?」
「えっ……」
王の足が止まる。
「民の為の王妃とまで言ってしまう私をあなたは、国王様はどうお考えかと……」
「……」
「意にそわぬなら仰って下さい!この四年半一度もこの事を問い掛けていませんでした」
確かにそうだった。
当然妻の民への執着は知っていた。
そう、ずっと前から……
「いいんじゃないか」
「えっ」
「私の方からはこの事を問い掛けてなかった。つまり気にして無かったのだろう」
「……そうですか」
「だから君も気にするな」
マリーは一瞬身を震わすと夫の手を取った。
「……ありがとうございます〜! 感謝この上ありません……」
マリーは夫の胸に顔を埋めた。
王は一瞬びっくりしたがマリーの背中にまで腕を回した。
「とにかくこんな所では何だから部屋へ戻ろう」
「はい……」
手を回したまま王はマリーと歩み始めた。
夫はマリーの傍で眠っていた。
なんか雰囲気的に今夜はもしかしたらと思ったけどいつもの夫だった。
これはこれで良しとしておくべきか。
次の国務会議までにパリで制度の形式を立ち上げておかねばならない。
費用の試算も本格的なものにせねば。
書面にするとなればテュルゴーらの助力も必要だろう。
「よし、頑張ろう!」
そして。
「許容してくれる我が夫に感謝いたします」
おやすみなさい〜
会議が終わりました。
議題を次に持ち越しは今の国会と同じですね。
引き伸ばしてばかりはいられないので頑張ってもらわねば。