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第十話 後始末と尾ひれ




 「何であんな無茶をなされるんですか!?素手で剣に立ち向かうなど……」


 カークが血相変えてまくし立てる。

 自分が守るべき主があり得ない暴走をしでかしたのだ。

 しかもカークはマリーの戦闘能力がどれ程のものか知るはずもない。

 どれだけ気を揉んだ事か。

 さすがにマリーも申し訳無さそうに肩を落とした。


 「心配させてしまいましたね。あれは、でも……」


 でも、何だろう?

 また年相応の女の子っぽくなっちゃうのか?


 「相手が大上段に剣を振り上げていたので。あの構えでは次の動作は振り下ろすしかないです。敵に次の動きが読める構えは余程の実力と覚悟が無ければ意味がない。でもあの悪党の動きと構えを見て、とてもそれ程の実力は無いのが何となく分かりました。侮っているつもりは有りませんが行けると確信しました。ハイヒールで動き回る訓練もしておりますので容易く靴を踏みつけられました。細いヒールなので靴の上からでも突き刺せます」


 「…………」

 

 まさか格闘理論の講釈を聞かされるとは。

 予想外すぎる。

 傍に立つビスケがカークに囁いた。


 「お聞きしたいのですがマリーアントワネット王女様とは一体どういう御方なのです?」


 「それは私が今一番知りたい事だ」


 「そ、そうですか……あ、申し遅れました。私はビスケと申します。よろしく願います」


 「おお、これは。私はカークと申す。これからは共に働き、共に……」


 カークはマリーを見た。

 挨拶を交わした自分とビスケを見て満足そうに笑みをこぼしている。


 (……共に悩まされる事になるのかもな)




 ショワズール公爵は庭園で散歩をしていた。

 不定期ではあるがかなり頻繁に、時間も気分次第で足を運んでいる。

 昨日のこの場所でどういう目にあったか分かってはいたが、つい来てしまった。

 そう何度も厄介事が続くなんて事は……


 「?」


 噴水の近くで人だかりが……

 何事かと近づいてみる。

 人だかりをかき分けてその先を見ると。


 五、六人の男共が地面にきちんと横一列に座らされている。

 彼ら全員が怯える様に視線を向ける先に立っているのは……



 (マリーアントワネット様だああああ〜〜!!)


 この後彼は事の後始末役を仰せ付かる事になる。


 


 六人の悪党は厳罰に処される事になったが剣を抜かなかったビスケは罪を問われなかった。

 問題は誰が彼らをひっ捕えたかだ。

 悪党ら自身も野次馬達もマリーだと言い切っていた。

 しかし事を穏便に収めたいショワズールとしては、これを信じる事も発表する事も許される物ではない。

 マリーも極刑を望まないという事なので、彼らに減刑と引き換えにカークに引っ捕らえられた事にすると約束させた。

 野次馬達の口は塞げないのは仕方ない。

 彼らの噂話はどれだけ尾ひれが付いて、どれだけ信じられるのだろうか。



 マリー達と一時の間、同行した二人組の男はこう言っていた。


「尾ひれいらねえでねぇか?」


「事実は小説より奇なりっちゅうやつか」





 こうして騒々しい出来事はひと段落終えた。

 マリーは夫にビスケを部下にする許可を求め、二つ返事で了解してもらった。

 彼は今日マリーがしでかした出来事を知る事もなく、噂話にも興味はなかった。

 宮殿に民が入る際に商人が貸し与える剣が、今後は模造品になると決まった原因も聞いてない。

 王太子はいつも通りの日常を今日も過ごしたのだった。



 今夜も先に眠りについた夫の隣でマリーは思いを巡らす。

 結局街に繰り出すのはお預けになったものの、そのためのお膳立てはできたと言えよう。

 慌てなくてもパリは逃げはしない。

 こちらから出向く!

 

 「待っててね〜!」


 そして


 「おやすみなさい!」






 やっと部下がそろいいざパリへ!

 となるかどうか……

 さあ、どうしましょ?

 


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