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第一話 マリーの嫁入り

 



 1770年4月21日、オーストリアのウィーンから一人の少女がフランス王朝に嫁ぐために出発した。

 婚礼のための行列はとてつも無い大規模なもので、馬の数だけでも三百何十頭もの数であったという。

 行列は何日もかけて行進を続け、目的地のフランス王国に着いた頃には5月6日になっていた。

 少女の名はオーストリアのハプスブルグ家王族のマリア アントニア。

 フランスではマリーアントワネットと呼ばれる事になる。


 そして一週間後……


 彼女を迎えるフランス王家の面々がコンピエーニュ城にいた。

 マリーを迎えるのは国王ルイ十五世、その愛妾のヂュ・バリー婦人、国王の娘達三人。

 そしてマリーの夫となる国王の孫、ルイ・オーギュスト王太子。

 ここより少し離れたベルヌ橋でマリーに会う予定であったが……

 彼らには心配事が一つある。

 噂に聞く所、彼女がおよそ王族の枠からはみ出した行動を取る問題児だとか。

 母であるマリア・テレジアがそんな事は絶対無いと手紙にしたためてあったが文字に微妙に力みが見て取れた。

 息子亡き今、孫に次期国王を任せなければならないのに花嫁の噂に一抹の不安を覚える国王。

 王妃亡き今、愛妾となった自分の地位を脅かされないかと気に揉むデュ・バリー夫人。

 国王の娘達も警戒心を隠せなかった。

 ただ一人全く気にしてない者がいた。

 のほほん、とした性格の花婿ルイ・オーギュストである。

 それぞれの思惑の中、橋に着いた彼らはマリーの到着を待った。


 程なく橋の向こう側に馬車が到着し、中から一人の少女が降り立った。

 お付きの者に付き添われピンと伸びた背筋で優雅に歩むその姿。

 とても暴れん坊とは見えない。

 と、少女がこちらに目を向けた瞬間、彼女の歩行速度が急に上がった。

 しかもどう言う理屈か背筋を伸ばした歩行姿勢のままで彼女は慌てて追いかけるお付きの者達を振り切り、ぶっちぎりの速さで橋を渡り切ったのだ。

 戸惑う迎えの面々の間近でぴたりと止まると彼女は満面の笑みで挨拶のポーズをとった。


 「皆様方お迎え頂きありがとうございます。初めまして、マリーアントワネットでございます! 以後よろしく願います!」


 その時全員の思った事をルイ・オーギュストが口にした。


 「声、大きいね……」

 




 マリーにまず国王が挨拶をした。

 

 「よく来られた。私が国王のルイ十五世だ。そして…」


 王は花婿の背を押した。

 ルイ・オーギュストが口を開こうとした時、


 じっ……


 マリーが彼を見つめていた。

 上目遣いに、期待感に満ち満ちた青い瞳を輝かせて。

 これにはのんびり屋の彼も狼狽えた。

 微妙な間が数秒続いた後、やっと彼は声を出した。

 

 「私がそなたの夫となるルイ・オーギュストだ」

 


  一方のマリーは夫となる人をしっかりと見定めていた。

  確か年は自分より一つ上の十五歳。

  何かおっとりとした雰囲気。

  しかしそんな見た感じよりも……


  マリーはずいっと前に足を踏み入れるとルイ・オーギュストの手を取った。


 「!」

  

 ひるむ彼に構わずマリーは掴んだ手を胸元まで引き寄せ握りしめた。


 目をつぶる……


 (  ……これは  ……馴染む!)


 理由はよく分からないが何故か心が和んでいった。

 これは良き出会いとなったようだ。

 マリーは目を開くと二度目の満面の笑みを夫となる男に向けた。


 「この上無き光栄でございます!」


 またもや全員の思った事を彼は言った。


 「う〜ん……よく笑うねえ……」


 こうしてマリーは他の者達との挨拶もつつがなく済ませ、城に向かう頃には夫婦仲良く手を繋いで歩くまでになっていた。

 



 そして5月16日に二人の結婚式がヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂にて行われ、その後パリのノートルダム寺院にて二回目の結婚式が行われた。

 その夜大晩餐会がベルサイユ宮殿の観劇の間で盛大に催された。

 マリーは声も笑顔も控えめにと言う助言を受けた事もあってか、これらの儀式をそつなく済ませてのけた。


 その後に行われるのが「寝床」の儀式だった。

 すなわち新婚の一夜である。

 これには流石のマリーも心の準備をしっかりと整えて望まんとしていた。


 寝巻に着替え寝室に向かい二人きりになった。

 共にベッドに入り、そしてマリーは夫を待った……





 ……寝息が聞こえてきた。



 ええええええ〜?!

 

 薄明かりの中マリーは隣を覗き込んだ。

 すでに熟睡している夫の顔があった。

 これは……


 マリーは思った。


 この人とっても無垢なお方なのでは?


 少々の間首を捻った末……


 

 (ま、いっか!)


 吹っ切れた表情に切り換えた。

 そもそもマリーは自らの志を実現するつもりで嫁いできたのだ。

 とてつも無く厳しい道だろう。

 それでも妻としての役目、子を産み育てる役目から逃げる気は無かった。

 しかし自分はまだ十四歳。

 慌てる必要はなかろう。

 今、夫はこんなだから。

 

 マリーは今一度、夫を眺めた。

 何故か第一印象は良かった。

 少なくとも彼を自らの志を叶える為の道具として利用などしたくない。

 そんな事をしたら自分を許せなくなる。

 しかし当分子供を授かりそうも無い現状は受け入れた上、有効に使ってもバチは当たるまい。

 

 (よし、明日から頑張ろう!)


 まずは……マリーの頭に浮かんだ物はと言うと。



  馬!!


 

 心の中でそう叫ぶとマリーは目を閉じた。

 そして夫に負けない素早さで眠りに落ちるのだった。

 

 

翌日城内は上を下への大騒ぎとなるのだが……




 OZOと申します。

 もしマリーアントワネットがスーパーレディだったらという話です。

 しかしマリーアントワネットをネタにした投稿小説がこんな多いとは。

 つい最近もマリーアントワネット自身に転生した歴史改変小説を発見し似てるのか?と思いました。

 色々ありますが結局自分のやりたいようにやるしかないんでしょうね。

 という事でよろしく願います。

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