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3004年9月29日-3005年4月16日




3004年9月29日。

まず1週間が経った。


「サウロンサウルスは、見えるか?」


「………見える。

 いま、道路を横断してるぞ。」


サウロンサウルスは、ヤーネンドンを離れる。

ドルズリッジからストックトン、ウォルバラを破壊し尽くした。


人々は、どこに隠れていいのか。

何に備えれば良いのかも分らない。


ただ姿が見えるか見えないかも分らない敵に生活を蝕まれていた。




「………恐竜ってのは、どれぐらい生きるものなんだ?」


「ティラノサウルスなら20年ぐらい生きるぞ。」


「そんなものは参考にならんよ。

 今のサウロンサウルスには、天敵となる生物がいない。

 元気に活動できない年齢になってからも何年も生き続けられるだろう。」


軍人や政治家、専門家は、不愉快そうに話し合っていた。


「ハッキリ言っていくら巨大生物でも、たった一匹だ。

 これほど大騒ぎすることか?」


「これまでのケースから見て、2人に1人しか奴を見られない。

 あの恐竜の動きを予想することができない。

 国民には、安全を図るように指示すべきだろう。」


「毒ガスでも使うか。」


「いやあ、リスクが大きすぎる。」


しかし結局、思い付く限りの攻撃方が試みられた。


3004年10月3日。

戦車隊の投入。


3004年10月10日。

地上部隊の包囲、加えて飛行機からの爆撃。


3004年10月13日。

2度目の戦車隊による攻撃、および37cm列車砲による砲撃。


3004年10月14日。

毒ガス攻撃。


3004年10月22日。

埋設した爆薬の上に誘導した上での爆破。


3004年11月30日。

11度目の戦車隊による攻撃。

サウロンサウルスに電線を絡ませる感電作戦。


3004年12月5日。

初の艦砲射撃。

戦艦バザル・エルトンの42cm砲による攻撃。


3004年12月7日。

新兵器・音波攻撃兵器による攻撃を実施。


3005年2月21日。

実験中の怪力光線の投入。


3005年4月9日。

戦艦ビクネル・ウィレットの46cm砲による攻撃。


すべての攻撃が失敗した頃、半年が経過していた。

それらの成果は、サウロンサウルスは目視出来ないだけでなく攻撃も通用しないことが分かっただけだ。


「まだ何か。

 まだ手が残ってるんじゃないか?」


首脳部は、思い付く手をすべてやり尽くした。


特に毒ガスや大量の爆薬は、危険が大きく反対意見を押し切って強行。

その結果が失敗とあって首相は、失望落胆していた。


「………いい訓練にはなった。」


じゃらじゃらと勲章を着けた老軍人が唸る。


「だが、もう、これ以上のことはできんだろう。

 ダメージでは、爆薬作戦より大きなものは出せない。

 ビクネル・ウィレットの砲撃は、最大のものだったが威力ではアレを下回っている。


 海軍は、より大きな艦砲なら可能性があると騒いでおるが。

 悪い冗談だ。

 あれより大きな艦砲を乗せられる艦など作れるわけがない。」


「では、元帥。

 爆薬作戦を再度、実施するということは?」


疲れ切った政治家が老軍人に訊ねた。

その問いに彼は、やや呆れたように首を振って答えた。


「ああ……いや、そんな問題ではあるまい。

 あれでダメージを受けないのだから、あれ以上の爆薬や砲弾は、無意味だ。

 その点では、音波攻撃だの電流や毒ガス、怪力光線は可能性があった。」


言い終えてから元帥は、ふふっと鼻で笑う。


「は?」


「冗談だ。」




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