トイテミテネ
濡れた廊下を辿っていくと女子トイレまでたどり着く。
あの場所から一番近い水を処理できる場所なんてここ以外ないから当たり前なんだけれど、予想が外れてほしかったと今だけは思う。
緊急事態とはいえ女子トイレに入るのはさすがにまずくない?
せめて多目的トイレにでも逃げ込んでくれていれば遠慮なく行けた・・・いや、結局鍵はかけられているが意味ないか。
とりあえず、ドアだけ開けて中を覗いてみる。うん、中は静か。誰もいないようだ。
「堂々と入ってもいいんじゃない?」
後ろから宮崎さんがそういうが、流石に男性女性かまわず異性のトイレに入るのは犯罪だ。いや、そういうのは建前で罪悪感というか緊張するというか・・・。
「えい」
いまいち踏み込めないでいると後ろから蹴り飛ばされて転ぶ。当然水の道はトイレの中まで続いているわけで、転んだ拍子に水が・・・さっきクラス女子開放したときにすでに水浸しだったや。
「何くよくよしてるのよ。女顔なんだから問題ないでしょ」
「問題あるから! あと誰が女顔だ!」
「みゃーちゃん、流石にそれはおかしい」
早川め、転んでスタートダッシュ遅れたくせに偉そうにして。そうやって先に手を出す癖どうにかできない?
とはいえ、こうやって中に入ってしまったからには仕方がない。改めてトイレ内を見渡すが、男子トイレとそこまで間取りに変わりがなく、違いといえば小便器がある部分に何も設置されていないだけの広い空間が広がっているだけだ。
そこで少しだけ違和感を覚える。ただ、その違和感ははっきりわからず、なんだか小骨がつっかえているようにすっきりとしないような気分になる。
とはいえ、個室は一番手前の一室以外使われていないので、あそこにいることは明白だ。
「柄本さん?」
俺が違和感に頭を悩ませている間に宮崎さんは個室のドアをたたく。だが、返事がない。
特にうるさいわけでもなく、聞こえていないわけじゃないとは思う。
もし誰か別人がいたとしても返事くらいはするはずだ。
宮崎さんはもう一度ドアをノックするがやはり返事がない。
「あ、そうか」
ここでやっと違和感の正体の一つに気が付く。
「何かわかったの?」
「いや、静かすぎるなって」
「それが?」
これだけで察してくれるほど意思疎通ははかれないようだ。先輩ならこれだけで多分理解してくれるだろうに。
「もう一人の被害者?の子ってさ髪の毛から水で続けてたじゃんか」
「? そうねそれもすごい勢いで・・・あ」
早川も気が付いたようで・・・と思っていたが視線が床のほうに向いていた。
よくよく見ると水の跡は個室の前で止まっており、中から漏れ出ている様子もない。
俺が気が付いたのはもう一人の彼女(名前覚えてない)から大量に出ていた。なら当然こっちのえもと?さんも当然水が大量に滴っている状態のはず、なのに水音がまったくしない。
「よっと」
「みゃーちゃん!?」
早川は勢いをつけてジャンプすると天井と個室の間に手をかけ中の様子を覗き込む。
誰か別の人が入っていたらどうするんだ、そう思ったが。
「いない・・・」
その言葉にやっぱりかと納得はするものの疑問は出てくる。
なんで個室の鍵はしまっているのか。個室の前で水の跡は止まっているのか。それ以前に彼女はどこに行ったのか。
水の跡はこのトイレ以外に続いていないから別の場所に行ったとは考えられないし、じゃあこのトイレの中にいるはずだけど痕跡は消えている。じゃあどこに?
コンコン・・・
どこかから叩く音が聞こえた。
入り口のドア? いや違う、もっと別の方向から・・・。
音のした方向を見るが、そこにあるのは水道だけだった。ただ、そこにある鏡は男子トイレにあるように鏡の中に鏡が映りこんでいて・・・。
「あ」
鏡の中に鏡が映りこむことで無限に続くはずの風景は途切れていて床が浸水しているそんな情景が映し出されていた。
基本主人公来るとホラーは終わる




