オカケンハタンテイジムショ?
「ごめん、ほんとごめん」
早川がまじで申し訳なさそうに謝ってくる。さっきのペットボトルはイケメン眼鏡に向けて投げようとしたらしいのだが何故か一番離れている俺に当たっている。いや、お前体力測定とか全国女子高校生の平均付近くだったよな、俺にうらみでもあるのか?
「いや、流石に失礼しました。まさか着替え中途とは思いもよらず」
「男女同じ部屋で着替えについては突っ込まないんですね」
「いえ、四方山君が逆方向を向いていたことから察するに事故でスカートが脱げたのかと」
「察しいいっすね」
そんな察しがいいなら、なんでノックを忘れたんだ。
というか、なんで俺の名前覚えてるんだよ。
「はは、そりゃ入学初日に空から登校してくる生徒が印象に残らないわけないじゃないか。田島先生の受け止め方からもう、あの映画のシーンまんまだったしね」
「ああ、あの天空の城の」
復帰直後ちょくちょくシー○って呼ばれてたのそのせいか。
「それで、風紀委員長殿がうちに何のようかな? まさか噂のシー〇に会いに来たなんていうことはないだろ?」
あ、このイケメン眼鏡、風紀委員長だったんだ。 入学式参加してないとこういう情報にも疎くなるな。 まぁ、参加していても寝てただろうけど。
「それもあるが」
いや、あるんかい。 観賞用パンダじゃないんだぞ。
「少し紹介したい人がいてね。宮崎さん」
そう声をかけると「失礼します」と長髪の女子生徒が入ってくる。あ、この人知ってる。たしかうちのクラスメイトの一人で、何故かよくにらんでくる人だ。
「げっ」
俺を見るなりすごく嫌そうな顔をする。ほんと俺、何かした? まったく記憶にないんだけど。
「ほら、あんたの上履き隠したり教科書ゴミ箱に入れたりしてるグループの1人よ」
本当に心当たりがなく悩んでいると小声で早川が補足してくれる。
初日からイジメみたいなことされてると思ったらこいつが犯人か! てっきりクラスの男子がいたずらでやってるかと思ってた。
「ほお、まさか結婚相手の紹介か?」
部長、あんたは風紀委員長の母さんにでもなったつもりか? てか、宮崎もまんざらではなさそうだな。
まぁ、風紀委員長はイケメンだし、カップルとして見られるのが嬉しいんだろう。
「まさか、いま興味があるのは四方山君だけ・・・おや、どうして早川さんの後ろに?」
いや、あんなきしょいこと言われたら流石に逃げるわ。というか宮崎がすごい睨んできてるのだが、嫌われてる原因絶対これだろ。
風紀委員長は宮崎に用件を話すよう言うと、かなりいやそうにするがしぶしぶと話し出す。
「実は一昨日ごろから不穏な電話が来てるんです」
「電話?」
「はい、居場所を伝える電話なのですが、どんどんと家にちかくなっている気がして・・・」
電話、近付いてきてる、オカ研。あー・・・何となく話見えてきた。
「あ、ちょっと用事思い出したので失礼を・・・」
「まぁまぁ、別に大した用事じゃないだろ?」
「クラスメイトの悩みを聞いてあげるのもいい男として大事だと思うんだ」
面倒ごとを押し付けられるより前に退出しようとすると、風紀委員長と早川に両方から腕を引かれて席に着かされる。さらに両脇に椅子で挟まれ逃げ場を完全にふさがれる。
いや、逃げんから脇の手どけいイケメン眼鏡。
「ふむ、それで。なんとなく予想はつくが、相手はなんと名乗っていたのだい?」
「はい、メリーさんと名乗っていました」