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足曾木婆ーsid早川ー7

しばらく宮崎さんが落ち着くのを待つと鞄の中に入っていたゼリー飲料を渡す。

無理をして飲む必要はなかったのだが、それを一気に飲み干した。


「初めてあんなのを見たのによく飲めたわね」


「ん・・・口直し」


はいはい、嘔吐物の味残ってるのが気持ち悪いってことね。いや、それにしても食べ物のど通るとかこの子、結構神経図太いわね。


「それで、まだ続けられそう?」


「・・・死にたくない」


「そう」


心折れかけてるみたいだけれどまだ大丈夫そうね。

それにしても、あの中に人形の部品はなかった。ならどこに?


「ねぇ、本当にあそこにあるの?」


管狐にそう尋ねるとコクリとうなずきしっぽの先端で再びゴミ箱のほうを指す。

もしかすると「それ」は偶然あそこに放棄されていただけで人形の部品ごみ袋の方にあったのかもしれない。

「それ」がメリーさんに関係があるか同課は別問題としても警察への連絡や事情徴収、ごみ箱のカギを壊したことに対する言い訳などをいろいろと考えないといけない。


「ほんとひどい貧乏くじね・・・」


この後もう一件控えていると考えるとかなり憂鬱な気分になる。こっちみたいにひどいことがなければいいのだけれど。



宮崎さんに別の方向を向いているように言い、スマホで警察にコールしながらゴミ箱を開く、しかし・・・。


「え?」


さっきまであったはずの「それ」はなぜか姿を消していた。

確かに「それ」はゴミ袋の上に捨てられていたはずだ。しかし、まるで幻であったかのように「それ」はなく湧き出ていた蛆や蝿、それどころかひどい腐臭すらもなくなっている。


ふと、先ほど捨てた手袋を拾い上げるとそこには先ほど付着したものがなくなりきれいになっている。



「なに、これ」


宮崎さんも匂いがしなくなったのに気が付いたのかゴミ箱の中をのぞきこむ。


「うそ・・・」


さっきまであったものが姿を消す。そんな不可解な光景に背筋が凍り付く。あれはまさか幻覚だったのだろうか?


『———』


と、そこでコール音が切れ電話がつながった。慌てて電話を切ろうとし、地面に取り落とす。


『おかけになった電話をお呼びしましたが、お出になりません。電源が切れてーーー』


「え?」


恐る恐ると画面の割れたスマホを拾い上げ画面を確認するといつの間にか電波が圏外と表示されていた。

そんなはずがない。いくらの町が田舎なほうだとは言え住宅が多くたっている。そんな中で圏外になるだなんて・・・。

そんなことを考えていると管狐が場にあわないかわいらしい鳴き声を上げながら別の方向を見る。


「ねぇ、みゃーちゃん。あれ・・・」


肩をたたいてきた宮崎さんのさすほうをみると、きぃきぃと音を立てながら車いすを押す老婆がこちらに向かってきていた。そして、老婆はこうつぶやいた。


「アシハイランカネ」


怪異の発生条件

1:夜であること

2:鍵を破壊する

3:死体を目視する


悲鳴上げても誰も来ないよ

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