赤い傘ーsid松町ー2
フライドチキンショップを後にし向かった先は公園が近くにある横断歩道だった。
特徴などほとんどなく、あえて挙げるなら車がぶつかったせいか一時停止の標識が曲がり、ガードレールの近くに枯れた花束や、風化したテディベア、ソフビの人形などが置かれていることだ。
ここは何度も見回りのコースとして通ったことがあり、公園があるにもかかわらず、まったくと言っていいほど人通りが少ないのだ。
それも公園というのは名ばかりで、危険だからと遊具は一切なく、球技やフリスビー、ローラースケート、花火バーベキューなどほとんどの遊びが禁止され、さらには花も木もない単なる空き地状態なせいだ。
なんでも遊具やボール遊びはけがの危険性があり、花火などは公園を汚してしまい、草木は危険な虫や植物が自生する可能性があるためなくしたらしい。じゃあ何のための公園なのかと問い詰めたくなるものだ。
それにしても事前に聞いていた情報では確か交差点に人形の部品がある。そう聞いた記憶があるのだがさて?
「おいおい先生、交差点はすぐそこにあるじゃないか」
たしかにここを抜けた場所、それも視界に映る場所に交差点はある。しかし、ここはその少し手前の横断歩道、普通に考えて違うのでは?
「ここは事故が多くて有名な道路でね、ここで多くの子供が事故にあって死んでいるのだ」
そのことはすでに知っている。というのも教員には「事故マップ」なる事故が起こりやすい場所が記されたものが配布されてるからだ。小学生の登下校の時間には大人たちが旗を持って監視しているほどだ。この風化したおもちゃもなくなった子供たちを思っての物だろう。
「そういう場所にはちょっとした噂がつきものでねぇ、たとえば・・・」
そういってはじまったあまりにも不謹慎な噂話を得意げに語る宮北のことばを適当な相槌を打ちつつ聞き流しているとふと交差点のほうで黄色い何かが見えた。
あれは・・・子供?
こんな時間に何をしているのかと思い交差点のほうへ行くと黄色いレインコートを着て赤い傘を持った子供だとわかる。
この交差点は夜になると車の数が減るため車用の信号機が点滅状態になり車は徐行するようになっている。そのため歩行者信号は自由に渡れるようにはなっているが、交差点の真ん中で何かを探すように立っているのはさすがに危ないだろう。
仕方なく子供に近づこうとした途端、胸ポケットで息をひそめていた相棒が何やら抗議し始めた。
「おちつけ、あの子を歩道に連れ戻すだけだ」
できるならば保護者のところまで送り届けるくらいのことはしたい。
相棒の制止を振り切り少女のもとへとちかづき声をかける。
こんなごつい体をしたおっさんが話しかけると不審者に間違われるかもしれないが、そこは警察を何とか説得しよう。
「おい君」
声をかけてみたが、返事どころかこちらに振り向こうともしない。
「交差点の真ん中で立っているなんて危ないじゃないか」
仕方なく子供の肩をつかんで振り向かせようと・・・
肩をつかんだ瞬間子供は振り返りその子供の顔が見えたのだ。
肌の色は青白く、顔の半分がなくなっており蛆が沸いていた。
そして間もなく車のクラクションが響きいつの間にか車が目の前に迫っていた。
私は反射的に子供をかばうように抱きかかえ、すぐに強い衝撃が体に響き・・・