ヤットアエタネ
車の音くらいしか聞こえなくなった夜。俺、四方山 勇太は、なぜか無償にナッチー(むね肉の唐揚げ)が食べたくなってわざわざ20分くらい距離のあるセブントゥエンティー(コンビニ)まできてしまった。
チキンくらい近くのコンビニで買えばいいじゃんと思うかもしれないが、それがそうでもない。味付けも衣の食感も肉質もかなり違ってくる。
それにしても一個買うと新商品無料になるキャンペーンってズルいよな。ついつい買いすぎて1500円越えてる。このエナジードリンク引換券ってさすがに要らんな。
信号待ちをしていると不意に携帯電話がなる。いや、スマホじゃないんかいと思うかも知れないが、あんまりアプリとか使わないし、基本SNSも使わないから便利さがよくわからない。それに携帯の充電5日くらいもつしこっちでいい気がするんだよな。
閑話休題
電話の発信元を見ると公衆電話からのようだ。もう深夜の2時だぜこんな時間に電話かけてくるなんて非常識だろ。非常識なやつに礼儀なんて要らないよな。
「ただいま留守にしています。ご用の方は発信音の・・・」
「いま、○○市役所前にいるの」
それだけ言うと一方的に切られる。いや、俺のおふざけ思いっきりスルーされたんだが。というか自分の現在地報告してくるイタ電って何?
しばらく歩いているとまた電話がかかってきた。
「いま、○○公園前にいるの」
そういってすぐに切られる。ここからセブントゥエンティー方向に行ったところにある公園だったっけ?そう思っているとまたかかってくる。
「いま、コンビニ前にいるの」
また切られる。え、このコンビニってセブントゥエンティーじゃね? ってことはどんどん近づいて来てる?
怖くなってきて少し駆け足で家まで急ぐ。
またしばらくするとかかってきた。
「いま、あなたの後ろにいるの」
ガシャン!
「え?」
背後で何かが壊れるような音が聞こえた。
後ろを振り向くとそこには頭が壊れた人形とナイフを持つ少女が立っていた。
少女は気づいて貰ったことが嬉しかったのかニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
不気味に思い逃げ出そうとしたが何かに抑えられてるように身体が動かない。
「やっとあえたね」
そういうと少女は細い両腕を俺の首にむかってのばし・・・
・・・
・・
・
「はっ!」
目が覚めた。いや、今の全部夢かよ! ってあれ?
目の前に夢で見た少女の顔があった。無表情であるがその両目がしっかりとこちらをとらえており、様子をうかがっているようにも見える。
「えっと、あの。どうも?」
押し退けようとおもったが身体が何かに押さえられていて身動きできない。見ると複数の人形の腕がからだを押さえこんでいる。
そして、目の前の少女の顔が徐々に近づき怖くなり目を閉る。すると・・・
ちゅっ
唇にかたい感触がし、目を開くと少女との距離はゼロ。
いや、なんでキスされた!?