ウエデマッテルネ
先輩は息絶え絶えな二人を見てあきれた表情を見せる。
「おいおい、まだ半分も行ってないのだが? 運動不足にも程がある」
ほんとにそう。まだ階段の四分の一くらいしか登っていないのだ。
宮崎さんはともかく圭吾先輩は体育学年3位と聞いていたけど意外と体力ないな。長距離走とか苦手?
「あ、あなた達と一緒にしないでください・・・」
「宮北さんはともかく裕太くんもとんでもない体力だね。もしかして登山とかしてた?」
「まぁそんな感じです」
実際は異能力生えたせいか体力とかの回復スピードが異様に早くなってるんだよね。あと、足の方もかなり調子がいい。
この足、メアリーにつけられた謎の足だけれどすごく歩きやすいし簡単にはつかれなくなってる。ただ、前より太ももとかむっちりしてる気がするんだよね。
まぁ健康的でいいけど。
二人に水を渡すとかなり疲れていたのか一気に飲み干す。
ここ、確かに急斜面ではあるけどまだそんなに上ってないんだけれど。
「それで、神社で人形を完成させるって話だけれど、本当に意味はあるのかい?」
「さぁ?」
さぁってまた無責任な。
「仕方ないだろう? 部室みたいな逃げ場のない場所でやるよりかは神様のおひざ元でやったほうが断然安全そうじゃないか」
「それに魑魅魍魎が跋扈するこの町の中では比較的ましだとは思います」
町中でどころか学校内でもいたるところで怪異と遭遇するわ未解決の行方不明、殺人事件が起こってるのに誰も話題にしないしニュースでも大々的に取り上げられない。そんな町の中でも神社ならまだましな部類だろうと思いたい。
「それはそうですけど・・・」
と、こんな風に宮崎さんはやけに神社に行くことを渋っている。
いや、わかるよ?
こんなほとんど整備されていない長い階段があって物好きでもない限り下から見たら上る気も失せる。
おまけに周りの木々はうっそうとしてるし、お地蔵さんの行列や、何重にもある無駄に多い鳥居。
寒気のするような暗さに頂上に近づくほど感じる何かとんでもない圧。
更には先輩から聞いた謎が謎を呼ぶ説明。
とどめに何が祀られているかすらはっきりとしないそんな場所だ。
ここ登り切ったらラスボスが待ち構えていても驚かないよ?
「まぁなんにせよここから引き返すのも面倒だろう。そうだ四方山後輩、運んであげたらどうだい?」
「あ、そうですね。失礼します」
「うぉ!?」
圭吾先輩の後ろに立ち、抱え上げようとするが・・・うん、これは無理だ。
「さすがに持ち上がりません」
「いや、風紀委員長殿の方ではなく山崎の方をだな…」
確かにそうなんだけれど俺、彼女に嫌われてるしまともに抱えさせてくれないだろうからな。
でも圭吾先輩だったら断然OK。
「でも、圭吾先輩も体力持ちそうにないんですよね」
「あはは、ごめんね・・・」
「いや、こっちが異常なだけなんで気にしないでください」
「はぁ、仕方ない」
「きゃ!?」
そう言って先輩は宮崎さんの腰に腕を回すと米俵でも持ち上げるように方肩に担ぎあげた。
わぁ、先輩男前。
「ちょ、こわ!? おろして!」
担がれた宮崎さんは足をばたつかせ暴れる。
「あまり暴れていると落とすかもしれないが?」
「いや、せめて前後逆に持ってあげましょうよ」
今、宮崎さんは階段の下の方を向いているわけで町が一望できるとんでもない絶景になってるね。
「逆にしたら後ろのメンバーに絶景になるが?」
「それもいやぁ!」




