シヤクショ⑨ ―side宮崎―
「まぁ、用件も済んだしこれは君たちにあげるよ」
そう言って手紙を渡そうとするが、みゃーちゃんが触ろうとすると手紙が黒く焦げていきボロボロと崩れていく。
「・・・」
「一応言っておくけど僕の仕業ではないよ。こんな意地悪するくらいならとっくに処分している」
確かに、わざわざ目の前で焼くなんてよっぽど恨みを買っていなければしないよね。
でも、みゃーちゃんの態度的に何かしたんじゃないの?
「まぁ、アレは内容を知られたくないみたいだし、黙秘権を行使させてもらうよ」
「そう、賢明ね。運転手は炭にされてたわ」
「おっかないな・・・やっぱあれは深堀するべきじゃないね」
あれというのはきっと運転手が言っていた神様の事だろう。
でも、金髪の少女から手紙をもらったと言ってたよね。その子が神様だったりする?
「面倒ごとに巻き込まれたものね。それじゃあ、先生。部品ありがとうね」
「ああそうだ最後に一つだけ。宮崎さんだっけ?」
「え、私?」
突然名前を呼ばれて驚く。確か保険医とは面識はなかったはず。一体何だろうか?
「何がとは言わないけれど、ちゃんと謝りに行ったほうがいいよ。許されないだろうけど誠意は見せたほうが良い。そんな目に遭ってるのは君達の自業自得だからね」
「はあ・・・?」
自業自得? いったい何のことだろうか?
「ご忠告どうも。ようも終わったし帰るわよ。こんな場所いてられないわ」
そう言ってみゃーちゃんは背を向けてその場を立ち去り、私もそれに続く。
「ねぇ、あの人置いてっていいの?」
「死人に情けは賭けるものじゃないわ。大概ろくなことにならないから」
「死人?」
振り向いて確認してみたが、足もあるし体も透けていない。不健康そうな見た目ではあるけれど土色とか言われるほど変な肌の色もしていない。
「忘れた? ここは黄泉の世界への入り口よ? そんなところにいる時点で生きているはずないじゃない」
それはそう。
でも、私たちは普通にバスに乗ってここまでこれたからあまり実感がわかない。
「私たちがここにこれたのは多分狐モドキのせいよ」
そうみゃーちゃんが言うと「呼んだ?」と言わんばかりに管狐が鞄から顔を出す。
「こいつはこれでも魑魅魍魎の類。境界を渡ることなんて遊び感覚でできる」
「そうなんだ」
「こいつらは味方のフリをして自分の領域に獲物を引き込む危険な存在よ。何故か四方山に執着してくれているからいい物。油断した瞬間命を狙われるわ」
「うん、わかった気を付けるね」
えっとつまり管狐がパスポート代わりになってるってことでいいんだね。
この子が危険だってことを伝えようとしてくれてるんだけれど、ちみもうりょう? 教会を渡る?
専門用語を当たり前のように使われても私オカルトとか全然わからないんだけれど・・・。




