シヤクショ⑧ ―side宮崎―
「もうちょっと敬ってくれてもいいんじゃないかな? 一応君らの学校医なんだけどね」
保険医はあきれたように肩をすくめる。
「でも殉職済みですよね?」
「いや、違うからね? 殉職は仕事内容で死亡することで、職務と因果関係がない場合は含まれないからね」
どう違うの?
結局仕事中に死んだのだから同じことじゃない?
「まぁ、僕のことはいったん置いておくとして、はいこれ」
そう言って白衣のポケットから取り出したのは人形の右腕だった。
私は礼を言ってその部品を受け取ると鞄の人形に取り付ける。
これで今日向こう側のグループが探している部品と生徒会長が預かってる部品その二つがあつまればすべて部品がそろう。
これで私は助かるのだろうか?
「さて、これで僕の仕事は終わりだ。黄泉の国に来ることなんて本来あり得ないことだ。寄り道なんて考えるんじゃないぞ?」
「わかってます。鬱陶しい」
「君辛辣すぎない?」
正直遠足帰りの文言みたいで私もうっとうしいと思ったのは黙っておこう。
「それで、なんで私たちが来ること知ってたのですか?」
「ああ、金髪の少女が手紙を届けてくれてね。君たちが来ることを教えてくれたんだ。ほら、これ」
そう言って手渡された手紙を読もうと思ったが、全く読めたものではなかった。
いや、字が汚すぎてとかそういうのじゃなくって英語の筆記体で書かれてるせいで全く読めなかった。
流石に英語3でも長文の読解なんてテストでかいつまむ程度しかできなかったからね。
「ふーん・・・」
みゃーちゃんは読めたのか納得したような声をあげる。
「なんて書いてあったの?」
「・・・人形の部品取りに行くから待ってなさいだって」
「いや? まったく違うが?」
「・・・」
「みゃーちゃん?」
全く読めてなかったのね?
なんでわかったふりしたの?
しかし、どうにかして手紙の内容を読んでみたくはある。なにかほうほうないかな・・・あ!
そうだ、携帯の翻訳機能があれば読めるじゃん。
たしかカメラアプリで読み込んで翻訳できるやつもあったと思うから早速アプリをダウンロードして・・・。
スマホ画面をのぞき込んだ瞬間”目”が合った。
「きゃぁぁぁああ!」
「おっと!」
とっさにスマホを投げ捨てる。
あまりにも驚いて心臓を落ち着かせるのに時間はかかったけれど、勝機は保ててる。
忘れてた! 確か何かがスマホの中に入って、それで使えなくなってたんだった。
「ここでは、電子機器と鏡は基本使えないものと思った方がいいよ。なんでも・・・」
「向こうとつなぐ門になるからですよね」
「そういうこと」
言い切る前にみゃーちゃんがさえぎってしまい。少ししょんぼりとする。
みゃーちゃんは保険医に何かうらみでもあるの?




