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シヤクショ⑦ ―side宮崎―

カタンと帽子が落ちた音で一瞬遠のいていた意識が戻ってくる。


突然目の前にいた運転手の姿が消え頭が困惑する。

いったい今何が起きたの?


今突然光って轟音が響いて、焦げ臭い黒い塵が目の前にあって・・・。

え、雷? なんで?


「いやぁ、びっくりびっくり。神様ってホントおっかないねぇ」


そう愉快そうに笑いながらバスから運転手が降りてくると地面に落ちた帽子をかぶりなおす。

びっくりした。死んだのかと思った。


「あら、閻魔様に比べれば大したことないでしょうに」


「いやいや、閻魔様のほうが優しいものだ。あの方は理不尽に怒ったり面白半分で国滅ぼしたり気に入ったからと子供作らせたり誘拐したりしないからねぇ。しかし、西洋巫女みたいな仕事してるのに閻魔様とか信じちゃっていいのかい?」


「これでも生粋の日本人よ? ありがたいものには祈るし祝い事の名目で遊びまわったりもするわ」


「さすがにこっちが心配になってくるよ。まぁ偽信者に踊らされてないだけましかね」


そう言って遠い目をする運転手。

結局この人はどの立ち位置なのだろうか?


「それでだ。どうも神様はお冠なようで君の呪についてはしゃべっちゃだめらしい。探し物は死役所の前に立ってる白衣の男が持っているよ」


そう言ってポケットから新しい煙草を取り出すと煙を吹かせる。


死役所というのはきっとあの病院のような建物の事だろう。

あそこにはいったい何が待っているのだろうか?


・・・

・・


死役所の前までくると陰鬱桃なそんな気配が漂ってくる。

いや、気配というのは比喩表現でガラス戸の向こう側では暗い雰囲気でふらりふらりと正気もなく歩く人の姿ばかりが見えるからだ。

運転手が言ったとおり、ここはそういう場所なのだろうと納得する。


「やぁ、君たち。伏木高校の生徒かい?」


声をかけてきたのは白衣の少しやせ細った男性だった。

この人どこかで見たような・・・。


「あれ、あなた確か保険医の・・・」


ああそうだ思い出した。

確か・・・誰だっけ? とりあえずうちの保険医の先生。

昨日あたりから学校に来ていないという噂だったけれどなぜこんな場所に?


「少し油断してね。突然引き込まれてお陀仏さ。君たちも鏡には気を付けたほうがいい」


「鏡・・・ああ」


言われて確かにと思い出す。

学校のトイレ内で鏡の無効に化け物はいたし、謎の金髪の少女も何度も見かけた。

なんで今まで忘れてたんだろう、よっぽど鏡にはひどい目にあわされていたはずなのに。


「・・・やっぱりA市はおかしい。あまりにも不審死などが続くわりに大きなニュースにもならないし警察も死体処理だけで動こうとしない。探せば探すほど魑魅魍魎は見つかるのに誰も警戒しない。君たちは気を付けたほうがいい。漫画に出てくるすべてのものがこの町に現れる可能性があるそんな場所だ」


「そう、警告どうも。それで、人形の部品持ってるでしょ渡しなさい」


みゃーちゃん。人がせっかく忠告してくれてるんだから無視して要件を要求するのはどうかと思うよ・・・。






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