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シヤクショ⑤ ―side宮崎―

先ほどまで夜だったはずだった外の景色が赤く染まる。

ただ、その赤は夕焼けのような黄色がかったような色ではなくペンキでもこぼしたような暗い赤。

見ているだけで気持ち悪くなっていく。

そして、バスの窓から見える景色に家や畑はなく、人骨と十字架のようなものがまばらに刺さっていた。


そんな光景にめまいのようなものを覚え、気を紛らわすようにスマホへと視線を落とすと・・・。


目が合った。


そう、目だ。スマホ画面に目がある。

画面に目が表示されているのではなく目が浮き出て、うきで、うきでて


「きゃぁぁあぁあ!」


スマホを投げた。

なにあれ。なにあれ。なにあれ。なにあれ。

心臓がうるさい、甲高い音が、息苦しい・・・あれ、呼吸ってどうやるの?


「結子!」


名前を呼ぶ声とともに目の前に手が近づき指で両瞼が閉じられ軽く押さえつけられる。

そして、右手は温かいものに包み込まれ頭の横からも暖かいものに包まれる。


「ゆっくりと息をすって。ゆっくりゆっくり・・・すー、はー、すー、はー」


少しづつ落ち着いてきて、彼女の言葉通りに呼吸を繰り返す。

次第に耳元にトクントクンと規則正しい音が聞こえ始め苦しさがなくなっていく。


「そう、いい子いい子」


しばらくするとみゃーちゃんは私から離れ隣に座りなおす。


「あり・・・がと」


心配してなのかまだ片手はつないだままだ。


「ああ、だからスマホの電源は切ったほうがいいって言ったじゃぁないか。映るものはここでは出入り口になる。気をつけな」


そう言ってスマホを拾って差し出してくる運転手。


「それは言うの遅いわよ。そんなの乗った段階で注意すべきよ」


「・・・それもそうか。失敬失敬。生きた人間が乗ってくるのは久しぶりでね、すっかり忘れていたよ」


そう言いながら反省した様子もなく笑う。

その笑い声は運転席から聞こえてきたわけで・・・。

だったらこの手は誰?


恐る恐る顔を上げると、立っていたのは運転手ではなく顔をヘルメットで隠した工事作業員らしい男性であった。


「ふ・・・ぁ・・・」


スマホを受け取ったが「ありがとう」と声を出そうにも口がうまく動かない。

男性はそのまま一人席へと戻っていく。

その間、こちらには見えないように頭が見えないようヘルメットで隠していた。


「多分あれ死人ね」


「え・・・し?」


「周りみてみなさい」


そう言われてバスの内部を見渡すといつの間にか座席が満杯になっている。

中でも老人が多く、それ以外だと顔色の悪い数人と後部座席に顔をふさいで座る女子高生がいるくらいだ。


「?」


女子高生をよく見ると首元から何か青いものが垂れさがっていて、あしもとは水浸しになっている。

どこかで見たような・・・

そんなことを考えているとゆっくりとバスは停車し機械的な女性のアナウンスが流れる。


『ご利用ありがとうございます。終点、死役所前、死役所前。お忘れ物が無いよう・・・』





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