コドクノコドモ⑩
目玉抜きマジックなんてやって見せて何してるんだって話ではある。
向こうが先に挑発してきたんだからこれくらいの仕返ししてもよくない?
普通首がねじ曲がるだなんて見せられたら悲鳴上げるだの腰抜かして失禁するだのそう言った反応を期待していたのかもしれないが、生憎少しびくってなる程度でそこまで怖いとは思わなんだ。
相手を音のなるおもちゃのだと殴ってくる子供みたいに自分が絶対的強者だと勘違いしている態度が気に食わない。
とはいえ、だるまさんが転んだ中にやるようなことでもないし、流石に先輩たちに怒られ・・・
「たっち」
先輩は怪異の子がこちらに驚いて言葉を止めたのにもかかわらず大人げなく彼の背をたたく。
いや、そこは素直に中断しておこうよ。
「四方山後輩、勝てばよかろうなのだよ勝てば」
「大人げないですよ先輩」
「それならルールにするべきだね。それに、多少頓智を利かせてでもやらなければ中学生側に勝てるどおりがなくなるだろう?」
二人がハンデでやる分にはいいと思うけれど、有利側の高校生がやることじゃなくない?
「今一番ハンデがいるのは君だろ?」
「・・・」
ええ、そうですよ。今のところ惨敗してるのは俺だけで二人も先輩以外は捕まえられてるしタッチにも成功している。
ただ、5人目が出てきた以上まだ続ける意味はあるのだろうか?
いや、今回の目的は怪異を見つけ出す事じゃなくって人形の部品を手に入れることだ。
遊びに加わったのはついさっきなわけなんだし、満足していない状態で終わらせでもしたら結局手に入らずじまいの場合もある。
もう少し様子見するか。
・・・
・・
・
あのあと、続けざまに10戦くらいやった。
先輩が攻略の糸口を見つけたと言っていたのは本気だったらしく、彼を平然とタッチできるようになったのだ。
よくよく考えてみると鬼側は唱えきるまでは後ろを振り向いてはいけないため後ろが見えていてもどうやっても隙ができる。
さらに全員が慣れが進んだせいでだれも捕まらないようになってしまい、先輩以外は交代で鬼をするだけになってしまっている。
なんなんだよあの人。早口がうますぎてすぐ振り返ってくるわ、フライングを察知してジャストタイミングで振り返るわ、合間合間に小話挟んで笑わしてくるわ怪異もびっくりな勝率誇りだしてる。
そんな理不尽に怪異君は怒り新党・・・ではなくむしろ今まで以上に楽しそうにしていて、先ほどの小ばかにした笑顔から致命的に作り笑いに失敗したような笑顔を見せている。
これ、本当に楽しんでるの?
そして気が付いたことが二つ。
もう10戦もやっているわけなので、当然もう12時を過ぎていてもおかしくないころあいだ。
しかし、カメラの時計を見たところ11時からまったく時計が進んでいない。
ただ、時間が巻き戻され続けているわけではなく、カメラのバッテリーは刻一刻と残量を削っていっている。
そしてもう一つ。
合図が止まり動きを止めると後ろからポスっと誰かがぶつかってくる。
視界の中には先輩と少年コンビと怪異君。
じゃあこの後ろの子は誰?




