コドクノコドモ③
子供の失踪事件。
そんなことが起これば全国的にニュースで取り上げられ世間で話題となるだろう。
それも失踪した子供が一人ではなく複数人で場所までも特定されていれば危険な区画として封鎖されていてもおかしくはない。
それなのにだこの話は全く世間で話題に上がらず、当たり前のようにこのA市の人々は暮らしている。
なんせ、不審死や行方不明事件など日常茶飯事みな「またか」と慣れきってしまっている。
一応警察も動いてはいるのだが、謎の失踪や第2、第3の被害者になった上に意味不明な手がかりばかりが残されほとんど解決に至っていないのだ。
はっきり言って高校生探偵やイギリスの名探偵よりも電脳探偵や怪異家、ロンドンの魔術師教授の案件なのだから現実の人間が同行できるようなものではない。
話を戻すが、この町では失踪事件は日常茶飯事である。
そのせいか、昨日殺人事件の現場になっていようと子供はいつものように遊びに行き、親も「行ってらっしゃい」と当たり前のように声をかけてしまう。
失踪事件が多いという話が全く耳に入ってこなかったのも誰も気にしなさ過ぎて世間話にすら話題に上がってこないからなのか、暗黙の了解でその話を避ける人が多いからか。
そんな中で失踪事件の件数のデータに目をつけ、市の警察署のホームページから引っ張り出してきたのだからさすがだと言わざる得ない。
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というわけでその公園にまでやってきた。
錆が浮き出た鎖式のブランコに3メートルほどの滑り台、柵で区切られた砂場に、どうやって遊ぶのか謎のタイヤの遊具、エビフライのような謎の生物だと思われるものと雨に降られアイシャドウが流れてしまったパンダのような乗って遊ぶばねの遊具。
公園の中央には桜と思われる大木がそびえ立ち、そのふもとにはところどころ朽ちた木製のベンチが置かれてある。
夕方なのもあってか少し不気味に感じてしまうが、古くからある公園としては特別珍しいものはないだろう。
と、そんなことを考えていると見覚えのある背中を見つける。
2メートルを超える筋肉質の巨体にジャージ姿とくればあの人しかいないと思い声をかける。
「マッチョ先生、何してるんですか?」
「ん? ああ、四方山と宮北か。部活はまだやってるのか?」
「今探索中です。先生こと何を?」
マッチョ先生は何か言いずらいことがしばらく考えた後まあいいかと話をしてくれる。
「町の平和を守っていたのさ」
「おお!」
どうも嘘をついているようには全く見えなかった。陰陽師やらエクソシストがいたのだからヒーローがいても何ら不思議ではないだろう。だから後ろで「えぇ・・・」と引くのはやめなさい。あんたの愛しの人でしょ?
「まさか変身して宇宙から来た外来生物と日々戦っているとか?」
「まぁ・・・遠くはないか?」
なるほど、地球防衛的な奴か。
あるいは見えてなかったけれど光の巨人に変身して戦うやつみたいな?
「とはいえ、まったくそちらの探索に参加できなくて済まない。本来なら私が引率しないといけないはずなのだが…」
「大丈夫ですよ、順調ですし」
あと残りの部品も二つ、それも管狐センサーとメアリーからの案内もあるんだ。今日中にすべて部品は見つかるだろう。
と、そこでアラームの音が聞こえる。どうやら先生の携帯からだったらしい。
「おっと、もうこんな時間か。会議があるから行くが、9時を過ぎるようならば呼んでくれ、送迎くらいならしてやる」
そう言って先生は去っていく。
そういえば今は7時、こんな時間に会議とはいったい何をするんだろうか?