ワカレトイウホウガムリ
時間が飛んで放課後、部室へやってくるといつも通り先輩がいた。
3年になると受験勉強やら就職活動やら忙しくなるはずなのにいつものように紙にペンを走らせ続ける。
別にまだ一学期だからとなめてかかっているわけでもない。
3年は放課後に学力診断のためにテストが行われておりそれに合格しなければ補修授業に参加が義務付けられている。合格点は確か80点以上、入試問題の過去問から選出されたものがほとんどで、難関校の問題も紛れているとかそんな噂を聞いたこともある。
彼女が毎日ここにいるということはつまりそういうことだろう。
先輩は俺が入ってきたことに気が付いたのか顔をあげる。
「やぁ、四方山後輩待っていたよ」
いつものやり取りではあるけれど、今日に限っては少しうれしく感じる。
今日ほとんどの知り合いに「誰?」と言わんばかりの反応をされてしまったのだ。
毎回の授業で元のクラスに帰るよう教師に言われるのはさすがに腹が立つを通り過ぎて呆れてしまっていた。
「先輩はわかる側なんですね」
わかる側というのも初対面で俺だと気づいてくれた人もいたからだ。
「わかる・・・もしかして前髪でも切ったのかい?」
「なんですかその大きな違和感に気づけなかった時みたいな反応」
本当にその通りではあるが、漫画で完全に別人になり替わっているときに知り合いキャラが言いそうなセリフだ。
普段から外見ではなく別の何かで人を判断している先輩ならではの反応だろう。
「まあいいや、とりあえず座りたまえ」
そう言って対面の席を勧めてくる。
念のためトリモチやブーブークッションの類がないかと探っては見るが特に異変は感じられない。
「特にいたずらはないなっと・・・」
「おいおい四方山後輩、私のこと何だと思ってるのかね?」
「愉快犯」
「まあ否定はしないがね?」
しないのかよ。そう心の中で突っ込みつつ対面へと座ると先輩の表情が真剣なものへとなる。
「さて、四方山後輩。君に謝らなくてはならないことがある」
「謝らなくてはいけないこと?」
なんだろう? 先輩は普段から一人で周りを巻き込んで暴走するタイプではある。
しかし、他人に迷惑をかけるのは相手のデメリットが大きくならない程度で疲れてるときにやられるとしんどいくらいで収まるものだ。
当然本人も謝るつもりはないし、周りもまあいいかと許せる範囲の物ばかりだ。
「ここ最近メリーさんの人形について・・・いや、回りくどいのはよそう」
そう言って先輩は一息つくためにお茶をすすると。
「すまない! 今回の人形の呪い犯人が君だと思ってた!」
「なんで!?」
「だって、君の正体が異能力集団の宿敵だなんて全く予想してなかった・・・というよりできないからね!」
「何で知ってるの!?」




